在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

難しい動脈瘤の治療

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昨日は40台男性のクモ膜下出血(以下SAHと略させて頂きます)の患者さんが搬送されてきました。

 

SAHの多くは動脈瘤という血管のコブが破裂して起こるのですが、それ以外でも血管に裂け目が生じて起こる場合があります。これを解離性動脈瘤と呼び、動脈瘤によるSAH以上に治療戦略が難しい場合があります。

血管が裂けているのですから、再破裂させない為には閉塞させるしかありません。但し、閉塞出来ない血管もあり、常にどうすればよいか悩むことになります。

①閉塞可能→母血管閉塞(血管を閉塞させる)

②閉塞できないがバイパス可能→trap&bypass(血管を閉塞させて違う通り道を作る)

③閉塞できないし、バイパスも出来ない→flowdiverter?(パイプ様の管を解離している部位に留置して解離している血管と母血管を分離する治療器具)

 

血管の裂ける場所は、人種特異性あり日本人では多くの場合、頭の後ろの方を還流する椎骨動脈という血管に起こる場合が多いのですが、内頚動脈前壁という場所にも時に起こります。

昨日の患者さんは、幸い上記①で母血管閉塞を血管内治療で行る症例でした。

 

因みに動画の様な上記②症例の場合、開頭手術にて母血管閉塞させてバイパス手術を行います。

血管がさけてる場所は、非常に脆弱で術中破裂という恐ろしいことが起こる場合あります。なので、こうした場合を想定したアプローチ法の習得も重要です。

 

いずれにしてもカテーテル治療、開頭治療をきちんと行えるようこれからも努力してまいります。

 

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脳卒中治療ガイドライン

上記は脳卒中治療ガイドラインの抜粋です

 

高血圧は身体によくない

出来れば、体重管理、減塩指導などで血圧は管理したいものです

しかし、血圧が120/80未満の人に比べて、140-150または90-99の人は脳卒中を3倍以上起こしやすいことが知られています。180以上または110以上の人はなんと8倍以上です。

なので、生活習慣の改善で血圧管理ができない方は、降圧薬で管理した方がよいのです

降圧薬を内服した方と放置した方の脳卒中発症率を調べた研究を14件集めて解析したところ、3~5年間という短い期間でも、拡張期血圧(下の血圧)を5~6mmHg下げることで、脳卒中の発症率が42%も減少することが明らかになりました(Collins Rら. Lancet 1990;335:827-838)。

 

 なので、降圧薬を飲むことにあまり躊躇しない方がよいでしょう。

というか、是非内服して管理しましょう。

 

脳卒中治療ガイドラインにも分かり易い数値目標も掲げられていますので。

今年2本目の論文

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硬膜動静脈瘻に関する研究論文

今年2本目の研究論文が無事アクセプトされました。

日々の臨床の中で「あれっ?」と感じたことが、僕の論文投稿のきっかけなのですが、本稿は頸部痛が消失した硬膜動静脈瘻に関して書かせて頂きました。硬膜動静脈瘻とは動脈と静脈が短絡する病気で、いまだに僕自身理解できてないことが多い病気です。とりわけ本疾患は静脈解剖の知識が必要であり、血管内治療での疾患理解が最も難しい病気と考えてます。

但し、血管内治療での複雑な解剖理解の必要性と興味を沸かせてくれた疾患でもあり、こうした疾患に関して論文の研究欄に載せて頂いたことは、とても灌漑深いです。

明日からも勉強頑張ります!

 

脳卒中をどうやって防ぐか?

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脳卒中と高血圧の関係は上のグラフ見ると大変分かり易いですね。

数多くある脳卒中危険因子の中でも最も重要とされるのが高血圧の管理です。
グラフを見ると分かるように血圧が140/90を超えると脳卒中になるリスクが増加します。
特に上の血圧(収縮期血圧)が180以上、あるいは下の血圧(拡張期血圧)が110以上の方はすぐに治療を受けてください。

高血圧は脳出血脳梗塞に共通の最大の危険因子であり、高血圧治療は脳卒中の予防にきわめて有効であることが知られています。
ですから140/90を常に超えている方、あるいはそれよりも高い方は、今日から血圧を測る習慣をつけましょう。

健康は失った時に、その有難さが分かりますが、失った時には元に戻らない場合が多いのですから。

脳卒中記事の連載

www.qlife.jp脳卒中に関する連載を書かせて頂きました。

このブログの趣旨も少しでも脳卒中に関して分かり易く、皆さんの知りたいことを丁寧にと考えてます。

しかし、編集の方のダメだしをから、自分の日本語の力の無さを実感しました。

これからも独りよがりにならず、分かり易くを心掛けたいと思います。

 

日々の鍛錬

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日々の鍛錬

右側の画像はガーゼをIphoneで撮影した画像です。

正直何だか分からないですね。

左は、このガーゼを卓上顕微鏡で見た画像です。

 

脳外科の手術は、細かい作業が多く脳外科医になった頃は

果たしてこんな作業が自分で出来るのか?と不安になりました。

なので、時間があればop室へ行き、ほぼ毎日こうした練習を繰り返してました。

「ました。」と言うと過去形ですが現在進行形で今も行ってます。

最近は、とても性能が良い卓上顕微鏡あり、夜中の不気味なop室に一人きりで行く必要なくありがたいです。

恐らくガーゼ縫いの練習は5万以上、手羽先の血管使用したバイパスの練習も数千回以上やってると思います。

練習量だけなら、脳外科医上位10%に入れる気がします。

 

後輩などに「先生、よく練習しますねぇ」などと言われると、「君は神様にギフトを与えてもらった、恵まれた人なの?」と言うようにしてます。確かに生まれながらのセンスを持つgiftedな脳外科医も見てきました。まぁ、残念ながら、僕にはそうした贈り物なく生まれてきましたが。

 

開頭手術を受ける患者さんの不安は、計りしれないものといつも思ってます。

誰よりも治療計画を緻密に考え、想定されるリスクを可能な限り回避して、誰よりも練習して手術に挑むように、これからも心掛けていきたいです。

 

脳梗塞の話(ラクナ梗塞って何でしょう?)

 

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ラクナ梗塞

脳梗塞急性期における脳外科医の関心事は「どうやったらつまった血管を通せるか?」ということです。
なぜなら、脳梗塞が完成する前に治療することで脳梗塞のサイズを小さくできるからです。

そして、慢性期の課題は「どうやったら再発を防げるか?」ということにつきます。

再発を防ぐには、まず、どういう状態で再発がおこりやすいのかを知る必要があります。
ここで、少し硬いお話です
脳梗塞の分類は下記のように分類されます
1)ラクナ梗塞
2)アテローム血栓脳梗塞
3)心原性脳塞栓症

うーん、分かりにくいですね。
では、まずのラクナ梗塞を説明します。

ラクナ梗塞
これは脳の中の細い血管が詰まることによって起きる小さな脳梗塞です。
脳の細い血管の動脈硬化が原因です。
つまると脳の深い部分に小さな脳梗塞がおきます。
近くに手足を動かす神経がまとまって走っているところ(内包:ないほう)があるので、そこに栄養を送っている血管がつまると麻痺が出ます。小さいからといっても馬鹿にはできません。
原因は脂質異常症高脂血症)や糖尿病、高血圧、喫煙などの動脈硬化の危険因子であるとされています。

上の図を見てください。
脳の中のほそーい血管が詰まっているのがイメージできますよね。
これがラクナ梗塞です。

ラクナのは語源は穴倉だそうです。

つまり、小さな脳梗塞を少しかっこつけて言うと

ラクナ梗塞です。

 

難しいことを難しく話すのは、お医者さんの悪い癖だといつも感じてます。

難しいことを分かりやすく!

学生の頃の授業で難しい理論を分かり易く説明される講師が人気高いかったですし笑