在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

今年3本目の論文

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血管内治療におけるレスキュー症例

今年3本目の論文が掲載され送られてきました。

本稿は、緊急での血管内治療時アクセスルートに関するトラブルに関して書かせて頂きました。

急性期再開通療法は、時間との勝負にて事前情報無しで治療が始まります。

もちろん頭蓋内の情報は、ある程度分かった上なのですが、頭蓋外の情報は治療と並行しながら確認するので注意が必要です。こうした時のトラブルシュートとしてお役に立てればと考え、投稿させて頂きました。

脳卒中に関して書かせて頂きました。

www.qlife.jp

脳卒中に関して書かせて頂きました。

まだまだ、発展途上の身ですが身の丈に合った内容を書いたつもりです。

特に最近のトピックスとしてtPAの投与基準の変更は、脳梗塞治療を前進させると考えててます。

しかし、生活習慣病として位置づけらけれ病気であり予防が何より大切と考えてます。

脳卒中の予防には血圧管理が重要!

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高血圧の薬

血圧を下げる薬には、以下のような種類があります。

沢山あり分かりにくいですね。
1)カルシウム拮抗薬
2)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
  またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB
3)利尿薬
4)交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬)
5)交感神経α受容体遮断薬(α遮断薬)


難しい名前ばかりですね。

でも自分がどんな薬を飲んでいるのか、飲むなら効果の高い薬を内服したいところです。

以前書いたガイドラインの推奨は1-3までの薬です。

どの薬が効果的か評価するには、統計的に解析します。

統計学は非常に奥が深く正直私も分からないことだらけです(笑)。

 

一つの手法として沢山の論文の結果を全てプールして、そこから適切な治療法を評価する方法があります。

メタ解析と呼ばれる手法で、こうした解析には背景因子などがごちゃまぜにされており、正しくない方向へ結果が導かれる可能性がります。

ただし、こうした正しくない方向も解析対象の数が増えれば誤差となり、より現実世界(リアルワールド)を反映した結果になります。

 

次は薬の具体的な作用を書きたいと思います。

 

難しい動脈瘤の治療

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昨日は40台男性のクモ膜下出血(以下SAHと略させて頂きます)の患者さんが搬送されてきました。

 

SAHの多くは動脈瘤という血管のコブが破裂して起こるのですが、それ以外でも血管に裂け目が生じて起こる場合があります。これを解離性動脈瘤と呼び、動脈瘤によるSAH以上に治療戦略が難しい場合があります。

血管が裂けているのですから、再破裂させない為には閉塞させるしかありません。但し、閉塞出来ない血管もあり、常にどうすればよいか悩むことになります。

①閉塞可能→母血管閉塞(血管を閉塞させる)

②閉塞できないがバイパス可能→trap&bypass(血管を閉塞させて違う通り道を作る)

③閉塞できないし、バイパスも出来ない→flowdiverter?(パイプ様の管を解離している部位に留置して解離している血管と母血管を分離する治療器具)

 

血管の裂ける場所は、人種特異性あり日本人では多くの場合、頭の後ろの方を還流する椎骨動脈という血管に起こる場合が多いのですが、内頚動脈前壁という場所にも時に起こります。

昨日の患者さんは、幸い上記①で母血管閉塞を血管内治療で行る症例でした。

 

因みに動画の様な上記②症例の場合、開頭手術にて母血管閉塞させてバイパス手術を行います。

血管がさけてる場所は、非常に脆弱で術中破裂という恐ろしいことが起こる場合あります。なので、こうした場合を想定したアプローチ法の習得も重要です。

 

いずれにしてもカテーテル治療、開頭治療をきちんと行えるようこれからも努力してまいります。

 

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脳卒中治療ガイドライン

上記は脳卒中治療ガイドラインの抜粋です

 

高血圧は身体によくない

出来れば、体重管理、減塩指導などで血圧は管理したいものです

しかし、血圧が120/80未満の人に比べて、140-150または90-99の人は脳卒中を3倍以上起こしやすいことが知られています。180以上または110以上の人はなんと8倍以上です。

なので、生活習慣の改善で血圧管理ができない方は、降圧薬で管理した方がよいのです

降圧薬を内服した方と放置した方の脳卒中発症率を調べた研究を14件集めて解析したところ、3~5年間という短い期間でも、拡張期血圧(下の血圧)を5~6mmHg下げることで、脳卒中の発症率が42%も減少することが明らかになりました(Collins Rら. Lancet 1990;335:827-838)。

 

 なので、降圧薬を飲むことにあまり躊躇しない方がよいでしょう。

というか、是非内服して管理しましょう。

 

脳卒中治療ガイドラインにも分かり易い数値目標も掲げられていますので。

今年2本目の論文

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硬膜動静脈瘻に関する研究論文

今年2本目の研究論文が無事アクセプトされました。

日々の臨床の中で「あれっ?」と感じたことが、僕の論文投稿のきっかけなのですが、本稿は頸部痛が消失した硬膜動静脈瘻に関して書かせて頂きました。硬膜動静脈瘻とは動脈と静脈が短絡する病気で、いまだに僕自身理解できてないことが多い病気です。とりわけ本疾患は静脈解剖の知識が必要であり、血管内治療での疾患理解が最も難しい病気と考えてます。

但し、血管内治療での複雑な解剖理解の必要性と興味を沸かせてくれた疾患でもあり、こうした疾患に関して論文の研究欄に載せて頂いたことは、とても灌漑深いです。

明日からも勉強頑張ります!