在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

筋膜の重積と滑走性

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筋膜の滑走性
筋膜の重積がエコーにより評価でき、疼痛の可視化として有用であるということは直感的に理解できます。
しかし、重積=疼痛とはどの様な機序であるのでしょう?
ここで一つ示唆的な報告としてエコーエラストグラフィーにて(エコーによる弾性評価法とでも訳しておきます)重積部位は筋膜の硬度が高く治療介入にて、この弾性が改善するとされています。まぁ、とても当たり前な報告ですが、これに伴い筋膜の滑走性が向上するとされています。
図上段が治療介入前で赤く弾性硬ことが示されています。
図下段は治療介入後であり弾性軟に改善してます。これにより滑走性が上がるということです。
治療介入が行っていることは筋膜に対する
重積改善⇒弾性改善⇒滑走性改善 ということなのでしょう。
では、滑走性改善=疼痛改善はどの様な機序であるか?
これに対する仮説を次回以降説明できたらと考えております。

腰痛と筋膜肥厚の関係性

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腰痛と筋膜肥厚の関係性
特異的腰痛(診断と治療方針が明快な腰痛)に関しては、ここでは敢えて取り上げない予定です。日常診療で困っているのは非特異的腰痛と考えます。これに関してエコーによる筋膜評価は非常に有用です。
筋膜が厚くなる局所変化は慢性腰痛のある群では
腰痛のない群に比較し25%厚いと報告されています。これは腰痛に限らず、肩こり、頭痛などもエコーで観察でき、ハイドロリリースの効果に私自身が驚き、はまっていった大きなきっかけでした。機序として考察されているのは
ヒアルロン酸の粘性低下⇒筋肉と筋膜の滑走性低下⇒筋膜性疼痛です。
次回以降は、「ヒアルロン酸って、そもそも何?」ということを深堀していきたいと考えてます。

そもそも筋膜とは

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筋膜とは

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筋膜とは
「筋膜とは何で構成されているのか?」筋膜を治療対象とするならば、知らなければならない最低限の知識と考えます。
筋膜の構成要素は、細胞(線維芽細胞)と細胞外マトリックスです。細胞の構成要素としては線維芽細胞が重要であり、細胞外マトリックスの重要な構成要素としてコラーゲンが挙げられます。コラーゲンは15種類あり、そのうち筋膜構成するのはⅠ、Ⅱ、Ⅲ型コラーゲンです。Ⅰ型コラーゲンは身体の中で最も多く約90%を占めます。人体の大部分を占めるⅠ,Ⅱ型コラーゲンの伸長は静長の10%までであり、それ以上は損傷起こします。これにより筋膜の伸張性を担うのは主にⅢ型コラーゲンであり、平滑筋、内臓、動脈など柔軟な構造維持し、創傷治癒、腱・靭帯の構成などⅢ型コラーゲンは重要な働きを担います。
少し、面白くない話が続くかもしれません。しかし、経験値を科学し、誰にも合理性をもって理解され、再現性ある治療の基本は知識であると考えます。

1人の画像のようです

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ここから少しずつコアな話へ移りたいと思います。まず筋膜とは?として明快に答えられる人を自身の少ない経験の中では一人もいませんでした。Professor Andryの「柔らかい骨格である」という言葉はイメージとして非常に的確な表現だと感じます。自身、脳外科医として側頭筋や脊椎の手術において腰部、頸部の筋膜を展開しておりますが
①線維と脂肪に富み弾力性有する②筋肉と皮膚を滑走させる③温度調節、血流、リンパ流に関与する
という特徴を筋膜は有し、とりわけ筋肉と皮膚を滑走させるという点は重要と考えます。骨が関節により骨どうしを滑走させ脊椎動物として柔軟に動けるようにした反面、この機能障害にて疼痛など様々な障害を生み出します。同様に筋膜も「柔らかい骨格である」として滑走性の低下は様々な障害を生じると考えます。骨も筋膜も可動性低下(underuseもしくはoveruse)にて類似した症状を生じる点からも筋膜は「柔らかい骨格である」と感じております。進化の途上で海を体内に閉じ込める皮膚を生み出した神は、疼痛が生じる弊害までは想定外だったのかもしれません。

 

鍼灸の科学的考察

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鍼灸効果の科学的根拠

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鍼灸の科学的効果
鍼を刺入すると周囲の組織を巻き込み、抵抗が生じます。トルクをかけ終えると抵抗が減じます。このあたりの感覚は成熟した鍼灸師の方々では「響き」と表現するようです。鍼を刺入した後に組織が整然とした状態になることが顕微鏡レベルで確認できます。この機序として線維芽細胞へのmechanicalな刺激が神経細胞自体へ作用するようです。この機序は筋膜へアプローチするハイドロリリース(筋膜リリース)と同様の機序です。詳細は、後日説明しますが、正に鍼やハイドロリリースは目指す頂上が同じで登る道が違うだけということに驚かされます。
 
 

筋膜は第2の骨格

、「舌 肺 横隔膜 縱隔 大腰筋 腰方形筋 恥骨結合部 腸骨筋 膝窩筋 膝関節包 長跳屈筋 後經骨筋 長母指屈筋」というテキストの画像のようです

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deep front line
筋膜は筋の出力と共に、体幹の安定性に関与するdeep front lineが存在します。筋膜が図に示すよう舌から足の付け根まで連続性を持つことが分かります。と呼ばれ、この機能障害が様々な症状の原因となることが直感的に理解できる図でもあると考えます。骨が折れたり、ヒビがはいると治療対象となりますが、筋膜の機能不全・障害は無視され疼痛治療の対象外としてきたことは、医療に携わる我々の怠慢として反省しております。

ハイドロリリースの実際

 
ハイドロリリースにて実際に筋膜が剥がれていく画像を下記サイトにアップしてあります。
動画の貼り付けが本ブログでうまくいかず、You tube内にアップさせて頂きました。
ハイドロリリース(筋膜リリース)の動画もアップさせて頂きました。27秒過ぎから筋膜が剥がれていく様子が確認できます。