在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧

体重測定の重要性:老化と病気の早期発見#~在宅医療における体重測定の意義

体重測定は、立てる方であれば容易に行うことができ、体重を測りその経時的な変化をみることで、多くの事を知ることができるので、非常に重要であると考えています。 体重が減ってきているのであれば、老衰の過程かもしれませんし、悪性腫瘍が背景にある可能…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 65

高カルシウム血症 原因としては、下記が挙げれます ●がんの骨転移・浸潤:骨の融解 ●扁平上皮がん:PTH-related protein ●リンパ腫など:活性化ビタミンD過剰産生 *肉芽腫性疾患、副甲状腺亢進症、末端肥大症も同じ機序 治療に関しては急性期の治療はどの原因…

老年期うつ病の診断と対応~食欲不振で現れた老年期うつ病

施設入居中の90代女性。認知症あり。 半年くらい前から食欲不振がみられました。食事の摂取量は、主食は全量摂れるが、副食は半分以上残すくらいでした。 また、食事の飲み込みが大変そうで、食事を口にため込んでいるとのことでした。 食事の飲み込みが大変…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 64

緊急検査と治療を要する薬剤障害について述べていきたいと思います。 インフュージョンリアクション・アナフィラキシーについては、即座に症状発現するとされていますが、自身は1週間程度経過してからの症状発現も経験しています。 また 間質性肺炎はあらゆ…

認知症のBPSDに対する薬物療法の実践~認知症の行動・心理症状に対する薬物療法

施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりし…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 63

がん緩和ケアにおいて避けて通れないのが下痢の管理です。 軽度:(1日10回以下)の場合 ●ロペラミド、酪酸菌製剤、水分摂取 ●改善しないときには入院検討、化学療法以外の原因究明 にて対応します。 重度:(1日10回以上)の場合 ●点滴+ロペラミド(排便のたび1-2…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 62

がん緩和ケアにおいて避けて通れないのが嘔気嘔吐の管理であり、個人的には疼痛管理より困難な場合が多いと感じております。 時間軸で考える場合 急性(24H以内):5HT3受容体拮抗薬 遅発性(24H以降):ステロイド 予期性:ベンゾジアゼピン を使用します。 重症度…

頚椎の偽痛風:高齢者の新たな関節疾患~高齢者が首を寝違えた

高齢者が朝になって首の痛みや首が回らなくなったことを自覚し、「首を寝違えたようだ」と言って来院することがあります。 それは首の寝違えではなく、頚椎の偽痛風(Crowned dens syndrome)かもしれません。 今回は、頚椎の偽痛風を疑うポイントについて解…

偽痛風に関すること(偽痛風に関すること(膝関節注射の注意点))

「偽痛風(ぎつうふう)」はピロリン酸カルシウムが関節内に沈着する結晶性関節炎です。 高齢者に多い疾患(発症年齢はほとんどが60歳以上)なので、高齢者の発熱時には、鑑別に挙げておく必要があります。 病院勤務医時代に、入院患者の偽痛風の院内紹介が…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 61

ここから少し、がん緩和ケア副作用と合併症のマネジメントについて述べていきます。 まず化学療法には、殺細胞薬、ホルモン療法、分子標的薬、免疫療法が存在します。 これら4種類の化学療法において急性期に起こる副作用と遅発性に起こる副作用に分けること…

高齢者の入浴中の突然死を防ぐためにできること(高齢者の入浴リスクと予防法)

冬場は高齢者が入浴中に突然死する事故が多いと言われています。 今回はそのメカニズムを解説し、そうならないためにはどうしたら良いのかについて解説します。 脱衣所や浴室が寒くなっていると、血管が収縮し、血圧が上昇します。 →お風呂に入り、体が温ま…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 60

大腸がんの合併症は、がんの進行・再発による症状によるものです。 食欲不振、体重減少、疼痛、倦怠感、PS低下と進んでいきます。 転移・他部位の症状としては 消化管:消化管閉塞 がん性腹膜炎:イレウス、腹水 肝臓:肝障害、皮膚伸展痛、黄疸 骨:骨痛 脳:神…

下腿浮腫に関係する薬3つ(リリカの浮腫副作用に要注意!)

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"dou7e","text":"処方される薬で、下腿浮腫に関係する薬をまとめてみます。","type":"unstyled","depth":0,"inlineStyleRanges":,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"d7jk6","text":"①リリカ\nめまい、傾眠などの副作用…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 59

大腸がんの化学療法における治療の副作用は 殺細胞薬による骨髄抑制とそれに伴う発熱性好中球減少症・感染症に注意が必要です。 オキサリプラチン:末梢神経障害、アレルギー反応、嘔気・嘔吐、骨髄抑制 イリノテカン:下痢、嘔気・嘔吐、倦怠感、骨髄抑制(UGT…

在宅診療での腸閉塞の診断:超音波所見編

腸閉塞は在宅診療において見逃してはならない病態です。そしてこれは、超音波で比較的容易に分かります。腸閉塞では腸管拡張しており、また、ケルクリング襞がkeyboard signを呈しています。さらに腸管内容物が行ったり来たりする、to and fro がみられます…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 58

大腸がんのステージ別治療として 0期は粘膜内にとどまるものであり、内視鏡切除にて5年生存率は95%です。 Ⅰ期は腸管壁の固有筋膜層までの浸潤、リンパ節転移なしで外科的切除により5年生存率は90%です。 Ⅱ期漿膜への露出または周囲への浸潤してリンパ節転移…

慢性難治性疼痛に対する脊髄刺激療法を科学する7

SCSの治療効果高いとされる疾患として脊椎手術後疼痛症候群FBSS(Failed Back Surgery Syndrome)が挙げられます。FBSSに関して簡単にまとめると下記のようになります。 慢性疼痛治療ガイドラインでの推奨度Ⅰb(施行することを強く推奨する) SCSの有効性が高い…

訪問診療で最も大切なことは?(在宅療養の判断における食事摂取量の重要性)

訪問診療で患者さんに聞く質問で一番大事なのはなんでしょう? 私は「食事はとれていますか?」だと思っています。 バイタルサインが正常で、食欲が低下していなければ、在宅療養は続けられると大まかに判断できます。 一方、食欲が低下していれば、感染症が…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 57

今回から、大腸がんについて詳述していきます。 がん死亡数は男女合同で第2位(男性3位 女性1位)であり、がん罹患数は男女合同で1位の疾患です。 大腸がんの予後は化学療法の進歩にて劇的に改善してます。 過去15年の治療薬の進歩で予後が改善しました。 生存…

パープルバッグ症候群とは:在宅医療と尿路感染症

長期に尿道カテーテルが留置されている患者さんで、尿バッグが紫色であることを気にしている患者さんがいました。 これは、紫色採尿バッグ症候群(Purple Urine Bag Syndrome)とよばれていますが、特に気にする必要はありません。 尿バッグが紫色になる機序…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 56

胃切除後の合併症として重要なものを挙げると ①ダンピング症候群は早期と後期に分けて考える必要があります ◆早期は食物が小腸へ突然入ることにより生じます 症状としては、動悸、冷や汗、ふらつき等が挙げられます ◆後期は高血糖による症状で、次に反応性の…

高齢者の身体的拘束を考える:転倒リスクと尊厳の保持

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"62iam","text":"最近の例では90代の女性で、認知症があり、勝手に歩かないように言ってもすぐに忘れて歩き出してしまうとのことでした。ちなみに、転倒して胸椎圧迫骨折を受傷した既往があり、転倒リスクは高い方です。…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 55

胃がんの化学療法における治療の副作用は 殺細胞薬による骨髄抑制とそれに伴う発熱性好中球減少症・感染症に注意が必要です。 S-1:嘔気、倦怠感、下痢、骨髄抑制、肝障害 オキサリプラチン:末梢神経障害、アレルギー反応、嘔気・嘔吐、骨髄抑制 シスプラチン…

アムロジンについての深いい話

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"aath7","text":"①GERD(胃食道逆流症)\nもともとGERDがある人はカルシウム拮抗薬で増悪する(45.4%)。アムロジピンで多く(61.3%)、ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)で少ない(12.5%)※\n機序は、血管平滑筋を…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 54

胃がんのステージ別治療として 1期は胃壁の固有筋膜層浸潤まで及びリンパ節転移2個までです。 この場合外科的切除ないし内視鏡切除で治癒率は90%と非常に高くなります。 3期は周囲への浸潤及び多数のリンパ節転移ありであり、外科的切除+補助化学療法とな…

ベルソムラ錠からデエビゴ錠への変更について(オレキシン受容体拮抗薬:睡眠への新たなアプローチ)

,"entityRanges":,"data":{}},{"key":"74uhc","text":"そのなかの一つに、オレキシン受容体拮抗薬があります。覚醒に関与するオレキシン受容体に拮抗することで覚醒させなくする=眠くさせるという作用をもちます。","type":"unstyled","depth":0,"inlineSty…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 53

胃がんの治療総論を述べます 切除が治療の原則ですが、切除不能例に関して 化学療法感受性のがんであり半数以上の患者に著効しますが、2nd ライン以降は効果が下がるのが特徴です 臨床試験での生存期間中央値は約13カ月です 乳がん同様、HER2陽性胃癌にはト…

敗血症は皮膚を診る

敗血症の定義は、「感染症で臓器障害が起きていること」です。 敗血症は早く対応しなければならず、そのためには、臓器障害が始まっている徴候を見抜かなければなりません。バイタルサインに加えて、身体所見としては、意識障害、尿量低下、皮膚の所見に注目…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 52

今回から胃がんについて述べていきます まず一般論として ・罹患率が大腸がんに次いで2位 ・内視鏡治療や胃切除術が治療の基本 ・個別化治療の開発が期待される ・ヘリコバクターピロリ感染が原因の多くを占める ・症状がある患者は進行がんが多い 切除不可…

慢性難治性疼痛に対する脊髄刺激療法を科学する6

脊髄刺激療法の適応は、慢性疼痛治療ガイドラインから 実行することを強く推奨する疾患は、脊椎手術後症候群、末梢血行障害です。 経験的には中枢性脳卒中後痛(視床痛)、脊椎への転移にて椎体が圧壊し神経根症状など多彩な疾患に効果を実感しております。 …