在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

看護師の特定行為研修の研修指定病院を取得にて看護師の受け入れ開始しました

【特定行為研修とは?】 訪問診療における“特定行為看護師”の存在意義 「特定行為研修」と聞いても、まだあまり耳慣れない方も多いかもしれません。これは、看護師が一定の医師の指示のもとで医療行為を“判断して実施できる”ようになるための専門的な研修制…

【在宅医療の現場から】高齢者の骨折予防とビタミンD製剤の注意点

高齢者が寝たきりになる原因のひとつに骨折があります。特に注意が必要なのは、 大腿骨頸部骨折(足の付け根の骨折) 脊椎の圧迫骨折(腰椎など) です。 これらの骨折、とくに大腿骨頸部骨折は**保存的治療(手術をしない選択肢)**が難しく、多くの場合、…

褥瘡を科学する15~【在宅医療で知っておきたい】外用薬の基剤の違いと使い分け

褥瘡や創傷治療を行ううえで、外用薬の基剤についての理解はとても重要です。基剤には「疎水性基剤」と「親水性基剤」があり、それぞれに特性と適した使用場面があります。 疎水性基剤とは? 疎水性基剤は水分となじみにくい性質を持っています。これにより…

高齢者の皮膚のかゆみ ~老人性掻痒症(ろうじんせいそうようしょう)~

年齢を重ねると、皮膚の乾燥やかゆみに悩まされる方が増えてきます。特に、はっきりとした皮膚炎や発疹がないのにかゆみだけが続く場合、それは「老人性掻痒症」と呼ばれる状態かもしれません。 老人性掻痒症とは? 老人性掻痒症は、加齢に伴う皮膚の変化に…

褥瘡を科学する14~在宅医療における褥瘡治療の基本

深い褥瘡などの慢性創傷では、まず「治癒を妨げている要因」を正しく見極めることが非常に重要です。 そして、その最優先の阻害因子を取り除くために、最も効果的な主薬の機能を選択していく必要があります。 単に創傷に薬を使うのではなく、「何が治癒を妨…

認知症の行動・心理症状(BPSD)に対して抑肝散が効く理由と注意点

認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)に対して、漢方薬の**抑肝散(よくかんさん)**が効果を発揮することが知られています。私自身も、在宅医療の現場でよく抑肝散を処方しています。 忘れられない抑肝散の症例 私が忘れられない症例に、頚椎症性脊髄症を患…

褥瘡を科学する13~外用薬について知っておかなければならない理由

在宅医療において、**褥瘡(じょくそう)**への対応は非常に重要なテーマです。なぜ外用薬についての知識が求められるのか?その一番の理由は、最初に褥瘡に気づくのは看護師(Ns)であり、最初に初期対応を行うのも看護師であるからです。 現場では、スピー…

降圧剤、朝と夜どちらがいい?〜Wake up strokeと内服タイミングの考察〜

「Wake up stroke(起床時脳卒中)」という言葉をご存じでしょうか。「朝になってもおじいさんが起きてこないので見に行ったら、動けなくなっていた」という状況です。 心臓や脳の血管性の病気は、寝ている間に発症することが少なくありません。それにもかか…

褥瘡を科学する12~湿潤環境と皮膚感染症について

創周囲の皮膚に真菌症などの皮膚感染症が発生している場合、湿潤環境が続くと症状が悪化しやすくなります。感染予防や悪化防止には、適切なスキンケアと環境管理がとても大切です。 さらに詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご覧ください! 【YouTube】内田賢…

在宅でも安心して呼吸管理を ― 気管切開・人工呼吸器管理と「持続吸引」のススメ ―

気管切開をして人工呼吸器を使用している患者さんは、自力で痰を排出することができないため、適宜の気管内吸引が欠かせません。在宅医療の現場で、この「吸引」が大きなハードルになることがあります。 吸引は、「呼吸の通り道を掃除する」というイメージで…

褥瘡を科学する11~感染創にはドレッシング材を使わない!?

~在宅医療の現場からお伝えします~ 感染を起こしている創傷(感染創)には、通常のドレッシング材は使用しません。代わりに、毎日の創部洗浄と、抗菌作用を持つ外用薬による局所療法を中心に治療を行います。 感染がある場合、ドレッシング材で覆ってしま…

風邪に葛根湯?実はタイミングと体質が大切です

風邪の漢方薬といえば「葛根湯(かっこんとう)」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ですが、漢方は病名に対して使う薬ではありません。その人の体質や病状のタイミングに合っているかが非常に大切です。 葛根湯が合うのはどんな人? 葛根湯が最…

褥瘡を科学する10~ドレッシング材、カットしてもいい? してはいけない?

褥瘡や創傷のケアに欠かせないドレッシング材(被覆材)。使用時には「サイズが合っているかどうか」がとても重要です。 しかし実は、カットして使用してもよいドレッシング材と、カットが推奨されないドレッシング材があるのをご存じですか? たとえば、以…

褥瘡が感染したら?〜消毒薬がNGな理由と正しい治療法〜

褥瘡(じょくそう)が感染しているかどうかを見極めるには、「感染の4徴候」を確認します。 熱感(熱を持っている) 発赤(赤くなっている) 腫脹(腫れている) 疼痛(痛みがある) これらのサインが褥瘡周囲にある場合、感染の可能性があります。 消毒薬は…

褥瘡を科学する9~トップドレッシングを使うときのポイント

~湿潤環境と感染対策に配慮を~ 褥瘡(床ずれ)などの創傷管理において、トップドレッシング(2次ドレッシング)は重要な役割を果たします。使用時には、創部を適切な湿潤環境に保ちつつ、感染管理にも十分注意を払うことが必要です。これは、創傷治癒を早…

パーキンソン様症状と脳幹部脳梗塞――認知症診療から見えてきたこと

認知症を診ていると、ある一定の割合で「パーキンソン病に類似した症状」を呈する患者さんに出会います。私が外勤していた整形外科主体の病院でも、脳外科外来に「ちょっと物忘れが気になる」といった理由で受診された方々の中に、こうした症状を多く認めま…

褥瘡を科学する8~褥瘡ケアの基本:ドレッシング材は「滲出液の量」で選びましょう

褥瘡や慢性創傷のケアにおいて、ドレッシング材(創傷被覆材)の選択はとても重要です。その中でも特に意識したいのが「滲出液(しんしゅつえき)」の量です。 滲出液が多い場合には吸収力の高いドレッシング材、少ない場合には保湿性を重視したタイプが適し…

高齢者の下痢、どう対応すればいい?

~脱水予防と漢方の活用法~ 高齢者に下痢症状がみられた際、よくある誤解のひとつが「水分を摂るとさらに下痢が悪化するのでは?」という考えです。しかし、これは間違いです。下痢によって体内の水分や電解質はどんどん失われていきます。そのため、むしろ…

褥瘡を科学する7~ドレッシング材、きちんと使えていますか?

褥瘡ケアの基本は「状態に応じた適切なドレッシング材の選択と使用」です。 在宅医療の現場では、資料にあるようなさまざまなドレッシング材を活用することが可能です。ただし大切なのは、それぞれのドレッシング材の特性を理解し、創部の状態や大きさに合わ…

【解説】レビー小体型認知症とパーキンソン症状の違いと注意点

パーキンソン症状と聞くと、「手が震える」「体がこわばる」といったイメージがあるかもしれません。実際、パーキンソン症状には以下のような特徴があります。 固縮(こしゅく):筋肉に力が入り、思うように力が抜けない状態。まるで身体が固まったように感…

褥瘡を科学する6~ドレッシング材を使うときに大切なこと

褥瘡や創傷のケアにおいて、ドレッシング材はとても重要な役割を果たします。しかし「どれでも同じように使えばいい」というわけではありません。 大切なのは、ドレッシング材それぞれの特徴を理解し、創部の状態や大きさに合ったものを選ぶことです。適切に…

パーキンソン病と認知症の関係 〜若手時代の気づきと臨床経験から〜

医師として最初の研修年、神経内科の先生が脳外科をローテーションされていた時期がありました。その際に多くのことを教えていただいたのですが、とりわけ印象に残っているやりとりがあります。 「パーキンソン病って認知機能障害あると思う?」「……あると思…

褥瘡を科学する5~【褥瘡ケア】痛みを抑えるドレッシング材の選び方とは?

褥瘡治療において「痛みをどう和らげるか」は、患者さんのQOL(生活の質)を左右する大きなテーマです。現在、日本で市販されているドレッシング材の多くは、直接的な鎮痛効果はありません。しかし近年では、創面に接する面をシリコーン素材にした製品が増え…

「褥瘡はただの傷じゃない」──老いとともに生きる褥瘡ケアの視点

褥瘡(床ずれ)は、単なる皮膚の傷ではありません。私たち哺乳類が陸で生きられるのは、皮膚という「バリアー」があるおかげです。体内にある“母なる海”を外界から守る皮膚──その防御機能が破綻してしまうのが褥瘡なのです。 このバリアーが壊れると、当然な…

褥瘡を科学する4~浸出液を適切に管理するためのドレッシング材とは?

褥瘡や慢性創傷のケアにおいて、「浸出液のコントロール」は非常に重要です。創部に滲出する液体が多すぎると感染や周囲皮膚の浸軟を引き起こし、治癒の妨げになります。 このような浸出液を吸収し、保持する機能に優れた被覆材として、下記のようなドレッシ…

【在宅でできる褥瘡ケア】湿潤療法だけでは不十分?エアマットと体圧測定のススメ

褥瘡(じょくそう)は、寝たきりや長時間同じ姿勢で過ごす方にとって、避けて通れない大きな問題です。そもそも褥瘡とは、体位を変えられない状態で、同じ部位に圧がかかり続けることで発生します。 いくら湿潤療法などの創傷ケアを丁寧に行っていても、原因…

褥瘡を科学する3~【褥瘡ケアの要】浸出液をコントロールするドレッシング材の役割とは?

褥瘡治療において、**「浸出液の適切な管理」**は非常に重要です。その鍵を握るのが、**吸収・保持機能に優れたドレッシング材(被覆材)**です。 浸出液を「吸って・保つ」ドレッシング材 資料にも示されているように、褥瘡用の被覆材には以下のような特徴…

褥瘡(じょくそう)に対する進化した湿潤療法「開放性ウエットドレッシング療法」とは?

病院勤務時代、術後の創部治癒が遅れそうな患者さんには「カラヤヘシブ」という高機能な創傷被覆材を使用していました。非常に優れた素材ですが、コストが高く、一般には入手困難なため、在宅や褥瘡治療では使いにくいのが現実です。 一方、褥瘡に対しては家…

褥瘡を科学する2~【褥瘡治療の進化】壊死組織にどう対応するか?

在宅医療の現場では、褥瘡の進行度に応じた柔軟な対応が求められます。中でも重要なのが、壊死組織の処置です。 壊死組織には“自己融解”を促す外用薬が有効 褥瘡の状態によっては、壊死組織を取り除く必要があります。こうした場合に有効なのが、自己融解(…

褥瘡(じょくそう)治療の本質とは?

「褥瘡の治療」と聞くと、多くの方は「軟膏を変えてみる」「創傷被覆材(そうしょうひふくざい)を変えてみる」といった対応をイメージするかもしれません。 しかし、本質はそこではありません。 褥瘡をしっかりと治すためには、 なぜ褥瘡ができるのか 傷が…