2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧
〜心嚢液・胸水・LVEF・IVCの観察ポイント〜 ① 水分貯留の評価 ― 心嚢液と胸水を見分ける 在宅医療で心不全を診るうえで重要なのが、**体内の水分貯留(うっ血)**を把握することです。心臓の周囲や胸腔内に液体がたまると、呼吸苦や倦怠感の原因になります…
〜プローブの当て方と観察の基本〜 ① 患者の体位とアプローチ方法 心エコー検査では、左側臥位または左半側臥位が基本です。胸骨左縁の第3〜第4肋間から観察すると、心臓の構造を最も明瞭に描出できます。 しかし、在宅医療の現場では、 体位変換が難しい 高…
〜高齢社会における心不全管理の新しい視点〜 ① 心疾患は高齢者の主要な死因 日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。それに伴い、心不全をはじめとする心疾患の患者数が急増しており、「息苦しい」「足がむくむ」「疲れやすい」といった訴えを…
〜体腔液の性状と臨床判断のポイント〜 ① 腹水量の目安をエコーで評価する 腹水がどの程度たまっているのかを知ることは、治療方針を立てるうえで非常に重要です。CTなどの精密検査ができない場面でも、エコー(超音波)を用いた簡便な腹水量推定法が考案さ…
1. 横隔膜を境に「胸水」と「腹水」を見分ける 胸水や腹水を観察する際、まず注目すべきは横隔膜です。横隔膜は、胸腔と腹腔を分ける“仕切り”のような構造であり、液体がどちら側にあるかで病態の判断が変わります。 エコーでは、肋間から両側を走査します。…
〜胸水・腹水の「たまりやすい場所」を理解する〜 胸腔と腹腔の構造 胸腔は、肺の表面を覆う臓側胸膜と、胸郭内側を覆う壁側胸膜の間にある空間です。ここに液体がたまると「胸水」と呼ばれます。少量の胸水は肺の底(横隔膜に近い背側)にたまり、次第に肺…
一緒に働く仲間の在宅医療への想い | さくら在宅クリニック ──さくら在宅クリニックに新しい仲間が加わりました── このたび、私たち「さくら在宅クリニック」に新たな仲間が加わりました。脳外科・救急科・総合診療・看護・事務・アシスタントなど、多様な専…
胸水・腹水とは? 胸腔や腹腔の中には、臓器がスムーズに動くためのごく少量の水分が存在しています。しかし、心不全や感染、腫瘍などの原因によって過剰に水がたまることがあります。胸腔内にたまる場合を「胸水」、腹腔内にたまる場合を「腹水」と呼びます…
認知症の人が家庭で安心して暮らし続けるためには、本人の尊厳を守る環境づくりが何より大切です。そのために、家庭内で守るべき2つの原則があります。 ① 本人に「失敗体験」をさせない できないことを無理にさせたり、難しい課題を与え続けたりすると、本…
―外出機会が乏しい人にはデイサービスを― 認知症の人にとって、外出や社会的交流の機会は「脳の活性化」と「生活リズムの維持」に直結します。仕事や地域活動がなく、家に閉じこもりがちな場合は、デイサービスの利用が最も効果的な非薬物療法です。 ■ デイ…
認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して、抗精神病薬を使うかどうかは非常に難しい判断です。効果は確かにありますが、その一方で死亡率上昇という重大なリスクが伴います。では、どんなときに使うべきなのでしょうか。 ■ 抗精神病薬が「やむを得ない」ケー…
認知症が疑われたとき、すぐに薬や介護サービスを考える前に、まず行うべきことがあります。それは「診断の確定と除外」です。 まずは、内科的・脳外科的疾患による可逆的な認知機能低下(例:甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫、感染症など)を除外し、次に「…
認知症のBPSD(行動・心理症状)──とくに興奮・暴言・幻覚・妄想などが強い場合、医師が処方を検討する薬のひとつに抗精神病薬があります。 抑肝散やトラゾドンに比べると、抗精神病薬は確実な効果が期待できる一方で、重大な副作用リスクを伴う薬であること…
認知症のBPSD(行動・心理症状)の中でも、睡眠障害は家族や介護者を最も疲弊させる症状の一つです。「夜間の徘徊や覚醒で同居家族が眠れない」──その対応に悩む現場は少なくありません。 ■ ベンゾジアゼピン系睡眠薬は使ってはいけない これまで睡眠障害に…
―BPSD(認知症の行動・心理症状)への薬物治療をどう考えるか― 非薬物的アプローチ(家族・介護環境の調整)を行ってもBPSDが落ち着かない場合、初めて薬物療法の検討が必要になります。ここでは、漢方薬の抑肝散を中心に、科学的根拠と注意点を整理します。…
深部静脈血栓症(DVT)の診断では、血栓の存在・範囲・可動性・性状を正確に把握することが重要です。ここでは、エコーによる血栓評価の基本手順を順を追って紹介します。 血栓評価の4ステップ 1️⃣ 血栓検索(存在診断)2️⃣ 血栓範囲の把握3️⃣ 血栓中枢端(…
深部静脈血栓症(DVT)は、非侵襲的に診断できる代表的疾患のひとつです。その評価において、エコー(超音波)は最も有用かつ即時性の高い検査手段です。今回は、DVTの**エコー検査法(全下肢静脈法)**について解説します。 DVTのエコー検査法 ― 2つのアプ…
リンパ浮腫と同様に「下肢の腫脹」を呈する疾患として、**深部静脈血栓症(DVT: deep vein thrombosis)**があります。DVTは、**肺塞栓症(PE: pulmonary embolism)**の原因となり得る、命に関わる重要な疾患です。今回は、DVTの基本・症状・エコーによる診…
リンパ浮腫では、皮下組織の構造変化が進行とともに現れます。エコー(超音波)を用いると、この**皮下層の「見えないむくみ」を視覚的にとらえることができます。特に特徴的なのが、浅筋膜の変化と「敷石様像(paving stone appearance)」**です。 リンパ…
エコーはリンパ浮腫の病期判定・浮腫範囲の把握・経時的変化の追跡において、非常に有用なツールです。ここでは、臨床での観察手技と経時的評価のポイントをまとめます。 内部性状の違いによる評価 リンパ浮腫では、患肢全体の皮下組織の状態を把握すること…
リンパ浮腫の管理で最も重要なことは、病期を正確に評価し、進行を防ぐことです。問診・視診・触診に加えて、近年ではエコー(超音波)による非侵襲的な病期評価が注目されています。 ② 病期進行を適切に評価する ― エコーが果たす役割 リンパ浮腫の病期(IS…
リンパ浮腫は、リンパ管系の形成異常や機能障害によって、皮膚や皮下組織にリンパ液が貯留することで生じます。皮膚や皮下の厚みが増し、構造が変化していくのが病態の特徴です。腕や脚がむくみ、皮膚の硬さや張りが出ることが多く、完治が難しい慢性的な疾…
〜性格のせいにせず、関係の中で変わるBPSD〜 病前性格との関係 「もともと気が強かったから」「昔から頑固だったから」といった病前性格とBPSD(行動・心理症状)を結びつけて考えることがありますが、実は明確な因果関係は証明されていません。 研究によ…
うつ症状やBPSD(認知症の行動・心理症状)に対して、断酒・減薬・身体疾患の治療・非薬物療法など、医学的にできることをすべて行っても、それでもなお精神症状が残ることがあります。 その場合に必要になるのが、家族・介護環境の調整です。場合によっては…
身体疾患・薬剤・飲酒などを除外しても改善しない場合は、うつ病治療に進みます。高齢者(65歳以上)ではベンゾジアゼピン受容体作動薬に頼らず、**“脳の休息=質の高い自然な睡眠”**を最優先に整えることが基本です。 ポイント:脳の休息は「たくさん横にな…
〜安易な薬処方の前に確認すべきポイント〜 高齢者が「気分が沈む」「意欲が出ない」「眠れない」などのうつ状態を訴えたとき、すぐに「うつ病」や「認知症」と決めつけるのは危険です。その背後には、身体疾患や薬剤の影響など、見逃してはいけない原因が潜…
65歳以上の方が**「気分が落ち込む」「何もやる気がしない」と訴えた場合、単なるうつ病とは限りません。実は、その背後に認知症性疾患**が潜んでいることがあります。高齢者の「うつ」と「認知症」は症状が重なりやすく、**鑑別(見分けること)**が非常に…
認知症治療薬として広く用いられているコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)。記憶障害への効果は知られていますが、「抑うつ」や「アパシー(意欲低下)」などの精神症状にも効くのでしょうか? ガイドラインにおける記…
末梢神経ブロックで持続的な鎮痛が必要な場合、カテーテルを神経周囲や筋膜面に留置します。エコーの活用により安全性は向上しましたが、管理にはいくつかの注意点があります。 カテーテル留置と確認 留置部位:神経周囲や筋膜面 長期留置:刺入部を糸で固定…
近年、エコーを用いた末梢神経ブロックが普及し、胸部・腹部の手術や慢性痛に対する安全で有効な鎮痛手段となっています。ここでは 胸部ブロック と 腹横筋膜面ブロック(TAPブロック) を取り上げます。 胸部ブロック(胸壁ブロック・傍脊椎ブロック) 特徴…