在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧

攻めの栄養療法を科学する②~【リハ栄養】“リハ × 栄養”を同時に行うと回復力が最大化する理由

(さくら在宅クリニック|https://www.shounan-zaitaku.com/)(YouTube|https://www.youtube.com/@fukuroi1971) 低栄養・サルコペニア・フレイルの患者さんは、“リハビリだけ”ではなかなか改善が進まないことがあります。 その理由はシンプルで、動かすた…

攻めの栄養療法を科学する①~【攻めの栄養療法】低栄養・サルコペニア改善のカギは“リハ × 栄養”の両輪です

(さくら在宅クリニック|https://www.shounan-zaitaku.com/)(YouTube|https://www.youtube.com/@fukuroi1971) 在宅医療でもリハビリでも、**「食べられない」「痩せてしまった」「筋力が落ちた」**という場面は日常的です。 そんな時に重要なのが、今日…

在宅医療における認知症について73~【睡眠薬パンフレットはどう読むべきか】

——ラメルテオン国内治験(CCT003試験)を例に解説—— さくら在宅クリニック 不眠症治療では「プラセボ効果(偽薬効果)」が大きく働くことが知られています。そのため、製薬会社のパンフレットでは実薬(本物の薬)のデータだけが強調され、プラセボ群の変化…

在宅医療における認知症について72~【SNRI ベンラファキシンの治験データを読み解く】

— 実薬単独では効いて見えるが、プラセボと重ねると差はごくわずか — ベンラファキシン(イフェクサー)は 2015 年に国内承認された SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。「三環系より安全」「SSRIより効果が高い」と紹介されること…

在宅医療における認知症について71~【ミルタザピン(NaSSA)の治験結果を読み解く】

— プラセボとの差はわずか、それでも副作用はしっかり出る — ミルタザピン(レメロン/リフレックス)は「NaSSA」として知られ、SSRIでもSNRIでもない“別系統の抗うつ薬”としてよく紹介されます。 しかし、治験データを見る限り、SSRIと同じ問題点が存在しま…

在宅医療における認知症について69~「抗うつ薬に依存性はない」という言葉をどう受け止めるか

— 中止後症状と“依存性なし”のギャップ — 前回の記事で触れたように、抗うつ薬、とくにSSRI・SNRIには**中止後症状(discontinuation symptoms)**が高頻度にみられます。しかし、この「中止後症状」という概念は、現場の一般臨床医には十分知られていない可…

在宅医療の役割 ―「人生の主導権を取り戻す」ための医療とは―

病気が進んでくると、私たちはいつの間にか「自分の人生なのに、自分で選べなくなっていく」そんな感覚に出会うことがあります。 通院の負担、治療の決まりごと、身体の変化…。気づけば、生活のリズムや過ごす場所さえも、誰かに委ねざるを得ないことが増え…

在宅医療における認知症について70~【抗うつ薬の“効果グラフ”はなぜ誤解を生むのか】

— 製薬会社が「プラセボ群を目立たなくする」方法を徹底解説 — 抗うつ薬の効果を示す治験データは、しばしばプラセボ群(偽薬)に比べて優れているように見えるよう加工されています。 とくにSSRI のように、自然回復率の高いうつ病では、実薬とプラセボの差…

来年度より頭痛外来開始いたします:難治性頭痛への新たなアプローチ~蝶口蓋神経節(SPG)ブロックとは?

頭痛診療は年々進歩していますが、急性期の強い痛みへの即効性のある治療となると、選択肢は意外と限られています。 特に、 群発頭痛 三叉自律神経性頭痛(TAC) 自律神経症状(流涙・鼻閉)を伴う片頭痛 では、薬物療法だけでは効果が不十分になりやすく、…

在宅医療における認知症について68~【医師向け】抗うつ薬の「中止後症状」を理解する

— SSRI・SNRIの離脱症状はなぜ起こるのか — 抗うつ薬は“始めるのは簡単だが、やめるのは難しい薬”です。その理由のひとつが、服薬中断によって現れる 「抗うつ薬中止後症状(discontinuation symptoms)」 です。 イライラ 嘔気 めまい 運動失調 発汗 感覚異…

在宅医療における認知症について67~【医師向け】「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」という言葉に潜む“印象操作”

精神科領域の製薬会社パンフレットをどう読むか 医療の世界は非常に幅広く、精神科を専門としない医師が“精神薬理”の細部まで把握することは現実的には困難です。その隙間を埋めるように、製薬会社は「精神科の知識を分かりやすくまとめたパンフレット」を無…

在宅医療における認知症について66~長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)

― 日本で最も広く使われる認知症スクリーニング検査 ― HDS-Rは、日本の高齢者における 認知症のスクリーニング を目的に作成された検査です。特に 記憶障害を中心に、大まかな認知機能の低下を捉える ために設計されています。 最高点:30点 20点以下 → 認知…

在宅医療における認知症について65~Ala score(アラ・スコア)でみる

― アルツハイマー病とレビー小体型認知症の違い ― アルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)は、初期症状の出方が少し違います。 アルツハイマー病初期→ 記憶障害(もの忘れ)が目立つ レビー小体型認知症初期→ 記憶障害はそれほど目立たず、 注意…

在宅医療における認知症について6在宅医療における認知症について64~認知症が疑われる患者さんの「評価の進め方」

認知症を疑う患者さんを評価する際には、段階的に情報を集め、誤診を避けることが重要です。ここでは 第1段階〜第3段階 の流れと、特に使用頻度の高い MMSEとHDS-R の注意点についてまとめます。 ■ 第1段階:病歴聴取(家族からの情報が最重要) 最初のステ…

在宅医療における認知症について6在宅医療における認知症について60~認知症予防として“無効”とわかっている方法

世の中には「認知症に効く」「脳に良い」と宣伝されるサプリメントや健康法が数多くあります。しかし、実際には 科学的根拠に基づいた臨床研究で効果が否定されているものも少なくありません。 ここでは、無作為化比較試験(RCT)やメタ解析など、信頼性の高…

在宅医療における認知症について62~認知症予防:生活習慣病と生活習慣が与える大きな影響

認知症は「年齢」「遺伝」など変えられない要因もありますが、実は 生活習慣病や生活習慣の改善 によって発症リスクを下げられることが、多くの研究によって示されています。 本記事では、予防効果を期待できる “変えられる因子” として①生活習慣病の管理(…

在宅医療における認知症について61~ 認知症を「予防する」ために知っておきたいこと

― 特に“薬”が与える影響について ― 認知症の方を支えるご家族、とくに子世代からは、「自分も認知症になるのでは…」と心配の声を聞くことが少なくありません。 これまでの数多くの疫学研究から、認知症の発症にはいくつかの“危険因子”があることがわかってい…

在宅医療における認知症について60~認知症の「病状説明」をどう行うか ― 告知の限界と、軽症例における慎重な対応 ―

病状説明の前提:「告知は技術的に不可能」 認知症の診断や病名の説明(病状説明)は、患者本人や家族・介護者との協力関係を築くうえで欠かせないステップです。しかし、まず押さえておくべき大前提があります。 それは、 認知症の「確定診断」を技術的に…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する59~肺エコー×気道エコーによる食道挿管の確認 ― 現場で役立つ安全な換気評価の手法 ―

食道挿管の確認には「気道エコーの併用」が有効 気管挿管時に最も避けたいのが**誤って食道にチューブが入る“食道挿管”**です。この確認には、肺エコーだけでなく気道エコーを併用することで、より確実な評価が可能になります。 気道エコーでは、**上気道(…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する58~肺エコーの臨床的役割と観察ポイント ― 換気確認から病態評価まで ―

肺エコーが活用される主な場面 肺エコー(Lung Ultrasound, LUS)は、使用目的によって評価対象が変わりますが、主に以下のような場面で用いられます。 気管挿管後の換気確認 ショック時の病態評価(循環不全・うっ血) 酸素化不良時の呼吸状態評価 換気確…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する57~肺エコーで使用するプローブと装置の選び方

― 正確な胸膜評価のために ― 肺エコー(Lung Ultrasound, LUS)を行う際も、超音波診断の基本原則は変わりません。“どのプローブでもある程度は観察できる”というのは事実ですが、それぞれの特性を理解して使い分けることが診断精度向上の鍵です。 各プロー…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する56~肺エコーでの観察(アプローチ)のポイント

― 換気確認から見える“肺の動き” ― ① 換気確認の基本:呼吸に伴う胸膜の動きを捉える 呼吸時、肺は風船のように膨らんだり縮んだりします。このとき肺の表面を覆う臓側胸膜が伸縮し、それに対して胸壁内側を覆う壁側胸膜はほぼ固定されています。 肺エコーで…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する56~換気状態の確認における「肺エコー」の役割

胸部の超音波検査というと、多くの方は“心エコー”を思い浮かべるかもしれません。しかし実は、**肺の超音波診断(肺エコー)**も長年にわたり臨床現場で試みられてきました。 かつては「空気を含む肺には超音波が通らない」とされ、画像上に生じるアーチファ…

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する55~血行動態の評価:IVC(下大静脈)の観察ポイント

① IVCの太さから循環状態を読み解く 下大静脈(IVC:Inferior Vena Cava)の観察は、うっ血性心不全のスクリーニングに有用です。IVCは右房圧を反映する血管であり、呼吸に合わせて径が変化します。吸気時には陰圧により血液が右房に引き込まれ、径が細くな…

在宅医療における認知症について59~認知症の基本的対応③

〜外出の機会が乏しいときはデイサービスを活用する〜 認知症の進行を遅らせるために最も効果的なのは、**「家に閉じこもらないこと」**です。特に仕事や社会活動が少なくなっている方は、**デイサービス(通所介護)**の利用を積極的に検討しましょう。 1. …

在宅医療における認知症について58~認知症の基本的対応②

〜火の不始末への早期対応と社会的活動の継続〜 認知症が進行すると、本人だけでなく家族・近隣の安全にも関わるリスクが生じます。その代表が「火の不始末」です。一方で、認知症の人が長年続けてきた仕事や社会的活動を早く手放すことは、心身の衰えを早め…

在宅医療における認知症について57~認知症への基本的対応

〜安全と尊厳を両立させるために最初に行うこと〜 認知症が疑われた場合、まず行うべきことは**「原因を見極める」こと**です。その上で、日常生活を安全に、そしてできるだけ自立的に過ごすための対応を整えていきます。 1. まず除外すべきこと 認知症のよ…

在宅医療における認知症について56~抗精神病薬 ― 用法・用量と中止のタイミング

〜「できるだけ少なく・できるだけ短く」が原則〜 抗精神病薬は、認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して確実な効果がある一方、死亡率を含む重大な副作用リスクがある薬です。そのため、「できるだけ少ない量を、できるだけ短期間だけ使う」ことが大原則で…

在宅医療における認知症について55~抗精神病薬 ― 効果と危険性をどう見極めるか

〜BPSD(認知症の行動・心理症状)への最終手段〜 BPSD(認知症に伴う興奮・幻覚・妄想など)は、時に介護者の努力だけでは対応しきれないことがあります。そのようなとき、医師が最後の手段として検討するのが抗精神病薬です。 しかしこの薬は、確かに「効…

在宅医療における認知症について54~トラゾドン ― 認知症の不眠に対して「唯一の科学的根拠がある薬」

〜ベンゾ系は使ってはいけない、トラゾドンが第一選択〜 同居家族を睡眠不足に追い込むほど厄介なのが、**認知症の人の夜間不眠(睡眠障害)**です。夜中に何度も起きて歩き回る、叫ぶ、昼夜逆転する——こうしたBPSDは、介護者の消耗を大きくし、施設入所や入…