在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

No recanalization,No walk =再開通させなければ、歩いて患者さんを帰せない!

 

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塞栓性脳梗塞に対する血栓回収療法

tPAでは太刀打ちできない、大きな血管が詰まった場合どうすればよいか?

 

米国心臓協会・米国脳卒中協会は、6つの臨床試験の結果を基に、「tPA投与後も脳の太い動脈に血栓が残存している場合に血栓除去デバイスによる血管内治療が有効」として推奨しました。
特に下記の条件を満たす場合に推奨されています。

(1)発作前に重度の障害がない
(2)発症から4時間半以内にtPAが投与された
(3)脳主幹動脈に血栓がある
(4)18歳以上
(5)急性発症で重症な場合
(6)画像診断上、脳梗塞が患側の半分以下
(7)発症から6時間以内に治療を開始できる

時間制限がある中での治療はtPAが現在でもゴールデンスタンダードです。

但し、tPA時間制限についても画像評価にて明らかに脳梗塞が存在せず、救済可能領域ある場合は投与可能という基準が最近加わりました。これは「朝起きたら手足が動かない」=Wake Up Strokeなども適応となる画期的な緩和です。治療は常に安全性と有効性の天秤の中で揺れ動きます。

 

 さらに、脳卒中治療ガイドラインが急性期再開通療法での目覚ましい成績と科学的治療根拠が多数発表され、追補版という形で新しい記載が増えました
http://www.jsts.gr.jp/img/guideline2015_tuiho2017.pdf

ここでは脳梗塞に対する血管内治療がグレードAで推奨されています。

思えば「ホノルルショック」と呼ばれる、血栓回収療法に対する否定的論文が出た時の落胆が遥か昔に感じられます。

まだまだ、脳卒中は課題山積ですが、一臨床医として少しでも世の中のお役に立てる奮闘していくつもりです。