在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における圧迫骨折の治療

これは、非常に難しい問題です。外科的な治療は偽関節など不安定性を伴う場合に検討されますが保存的治療においては、また別に機会設けて書かせて頂きます。自身も圧迫骨折で偽関節生じた患者さんに固定術やBKP(骨折した箇所をセメント様のもので固める治療)行うことがありましたが、そもそも骨が脆い状態=骨粗鬆症を改善する必要があります。これに対しては注射薬が有効でありPTH製剤と呼ばれる注射薬です。PTH製剤とは、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)を間欠的に注射することで、骨形成が促進され、骨密度を上昇させる薬です。現在の骨粗鬆症治療においては、一番効果の高い治療法と言われています。骨粗鬆症がひどく圧迫骨折を繰り返している方、または、転倒を繰り返しており骨折リスクが非常に高い方に有効です。

PTH製剤には、連日皮下注射製剤のフォルテオと週1回皮下注射製剤のテリボンがあります。どちらも、使えるのは、一生のうちの2年間という制限があります。フォルテオとテリボンの選択ですが、まずは、フォルテオができないかを考えています。しかし、フォルテオは自己注射のため、かなりしっかりとした人でないとできません。在宅医療を受けているような患者さんには、自己注射ができるような人はなかなかいません。そこで、介護者がしっかりしていれば介護者に注射してもらうか、看護師がいる施設に入所している方は看護師に注射してもらいます。

フォルテオに関して注射時に痛みがあるのではないかと不安になる方がいますが、針は非常に細いため、痛みで脱落する方はまずいません。フォルテオが難しい方には、テリボンを選択します。

テリボンにする場合は、毎週訪問診療にして、こちらで注射します(訪問看護では点滴はできても皮下注射はできません)。

テリボンの注意点としては、週1回の注射製剤のため、1回あたりの製剤の量が単純にフォルテオよりも多いので、より副作用がでやすいことがあげられます。具体的には注射後の一過性の血圧低下です。これを予防するためには、注射前にコップ1杯の水を飲んでもらうと良いです。PTH製剤には、どちらも高カルシウム血症の副作用があります。活性型ビタミンD3製剤と併用しないように注意しなければなりません。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

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写真は逗子在住山内明徳様撮影