在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

安易な抗生剤の使用を止めるべき理由

日本人は無類の薬好きです。高齢者で薬を内服していない患者さんを診るのは年に数回くらいかもしれません。そして安易な投薬の危険に関してバイオアベイラビリティの観点から。バイオアベイラビリティとは、服用した薬剤が全身循環に到達した割合を示した値です。因みに経口抗菌薬のバイオアベイラビリティを以下に記載します。

ペニシリン系 サワシリン 74-92%、オーグメンチン 75%

第1世代セフェム系 ケフレックス 90%、ケフラール 93%

第3世代セフェム系 メイアクト 16%、セフゾン 20-25%、バナン 46%

ニューキノロン系 クラビット 98%、アベロックス 90%

他に、クラリス 50%、ミノマイシン 90%、バクタ 90-100%
つまり、第3世代セフェム系抗菌薬は内服してもほとんど血中に入らない=内服しても意味がない薬です。血中には入らないけど、腸管には入ります。これにより、①低濃度で広域にカバーするため耐性化の問題があり、②Clostridium difficileによる腸炎を起こしやすいと言われております。つまり、経口第3世代セフェム系抗菌薬のフロモックス、メイアクトセフゾン、バナン、トミロン、セフテム、セフスパンは処方してはいけない薬です。傷の処置後に処方すべき抗菌薬は、ケフレックスかケフラールです。
(皮膚軟部組織感染症の原因のほとんどが、黄色ブドウ球菌か溶連菌といったグラム陽性菌で、グラム陰性菌をカバーしグラム陽性菌への抗菌活性が第1世代に劣る第3世代セフェム系の使用は理にかなっていません。バイオアベイラビリティも低いですし。)在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

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写真は逗子在住山内明徳様撮影