在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

褥瘡に対する湿潤療法について

病院勤務時代の術後の患者さんで、創部治癒遅延が予想される患者さんに対してはカラヤヘシブという被覆材を用いていました。とても有用な被覆材ですが高価であり、通常の薬局などで購入することができず褥瘡治療に援用することができません。褥瘡に対してはサランラップを用いて湿潤環境を保つ治療があります。この治療の難点は浸出液でムレることが欠点でした。さらに進化したラップ療法として開放性ウエットドレッシング療法があります。

これは、褥瘡を適度に湿潤環境に保ちつつ、浸出液は適度に吸収するという、とても優れた療法です。

具体的に使うのは褥瘡パッド(穴あきポリ袋入りオムツ)という、台所用の水切り袋と平おむつを組み合わせたものです。

処置方法は、水道水で洗ってパッドを貼るという単純なものなのです。

①ベッドが濡れないように、あらかじめ下におむつを敷きます(その際おむつではなくペットシーツにすると安価になります)。

  • 褥瘡を含め臀部全体をぬるま湯で軽く洗います。使うのは水道水です。この際、霧吹きを使うとそれほど水を使うことなく、ピンポイントで狙った場所を洗うことができるので便利です。褥瘡には水圧はかけません。創面で細胞培養しているようなイメージをもってもらえば、創内は愛護的に扱わないといけないことが分かります。褥創を強くこするは厳禁です。

③褥瘡周囲の皮膚についた水をティッシュペーパーなどで拭きとります。褥瘡内部の水分は拭きとりません。

 

④褥瘡パッドを当てて終わりです。この際、褥瘡パッドは褥瘡よりはるかに大きいパッドを使うのがポイントです(これは、創傷被覆材をできるだけ小さく貼るという従来の考え方とは異なります。この理由は、少しずれてもパッドが褥瘡に当たってくれるのと、大きいことで褥瘡にかかる圧を分散させることができるため)。また、パッドはテープで固定せず、おむつでくるんで固定するのがポイントです(これは、パッドが動くことで褥瘡にかかるずり応力を分散させることができるから)。おむつで固定できない部位はテープで固定します。

下肢の褥瘡にはナイロンストッキングを使うと便利です。ストッキングを履くことでパッドを固定することができ、またストッキングが滑ることで皮膚にかかるずり応力を分散させ褥瘡予防になります。

褥瘡予防にはワセリンを塗布するかフィルムを貼ります。これも、皮膚にかかるずり応力を分散させることができます。在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)

写真は逗子在住山内明徳様撮影