在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

漢方エトセトラ

人は認知機能が衰えると怒りっぽくなります。例えとして不適切かもしれませんが、ブレーキ性能が下がるのでしょう。こうした時によく使用する漢方に抑肝散という漢方があります。この漢方は不安神経症にも効きます。

印象的なエピソードとして、国内で最も高いシェア誇る化粧品会社の人事部長の患者さんが頚椎症で手術入院されました。新聞で私の地元の工場が閉鎖となり、辞めて頂くか国内の他工場に異勤してもらうという話をニュースで知り、全く関係の無い私もかなり衝撃を受けたニュースでした。こうした人事を一人ひとり説明していくストレスは大変なものだと思います。

前置き長くなりましたが、この患者さんが手術前日に手術の不安+仕事のストレスで人事不省なくらいおかしくなってしまい、手術延期を考えながら、抑肝散処方したところ何事もないように、今まで通り穏やかな状態へ戻りました。本当に抑肝散はよく効くなぁと思わされた瞬間でした。

抑肝散という漢方レビー小体型認知症に伴う幻視によく効きます。
また、眠剤としてベンゾジアゼピン系を処方したくないときに、1包を就寝前に出すこともありますし、不穏時に頓服として出すこともあります。

難点としては、認知症の患者さんにとっては飲みづらいことです。甘草が1包あたり0.5g入っているので、偽アルドステロン症(低カリウム血症、高血圧、浮腫)に注意が必要です。抗アルドステロン薬(アルダクトンA)と相性がいいので、心不全を合併している患者さんではアルダクトンAと併用するとよいようです。

写真は逗子在住山内明徳様撮影