在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

偽痛風に関すること(偽痛風に関すること(膝関節注射の注意点))

「偽痛風(ぎつうふう)」はピロリン酸カルシウムが関節内に沈着する結晶性関節炎です。

高齢者に多い疾患(発症年齢はほとんどが60歳以上)なので、高齢者の発熱時には、鑑別に挙げておく必要があります。

病院勤務医時代に、入院患者の偽痛風の院内紹介がよくありましたが、それもそのはずで、偽痛風を起こしやすいのは体に侵襲がかかったとき(外傷・手術・肺炎後など)だからです。

痛風は単関節炎(一つの関節に起こる炎症)であることが多いですが、必ず単関節炎というわけでもなく、2か所や3か所以上の関節炎となることもあります。

痛風を起こしやすい関節は、膝関節が最も多く、次いで手関節、足関節、肩関節、肘関節と続きます。

診察では、関節に熱感や腫脹があるかどうかをみます。関節は左右対称にあるので、左右を比べてみれば、熱感や腫脹があるかどうかが分かります。さらに、圧痛や他動時痛(関節を動かして痛みがでる)があるかをみます。

39℃台の熱が出たり、CRPが20~30くらいまで上がることもあります。診断のポイントは、発熱している割には、比較的全身状態が良いことです。

問診としては、偽痛風は再発が多いため、過去に発熱がでて関節が腫れて痛がったことがあったかどうかを、本人や家族から聴取します。過去のカルテからも、そのような病歴があったかどうかを確認します。

確定診断は、関節穿刺をして、関節液を鏡検に提出し、ピロリン酸カルシウムを検出することによります。化膿性関節炎の否定のために、細菌培養検査も提出するとなお良いです。

痛風時の関節液は通常、やや混濁した黄色い性状をしています。



腫れた関節の関節液を抜くことは、診断と治療のために良いことですが、関節穿刺にも少なからず感染の合併症もあります(関節穿刺による感染は1万回に4例)。

治療は、NSAIDsを1週間処方すれば治ります。関節内にステロイドを注射すれば、劇的に良くなりますが、化膿性関節炎でないことが自信をもって言えるか、将来人工関節の手術をしないと言えるか(ステロイド注射が術後感染のリスクになる)でなければなりません。

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