在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者の不定愁訴と漢方薬~多愁訴に半夏厚朴湯が著効した症例

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)はいわゆる「ヒステリー球」という、喉に何かが詰まったような違和感に効くとされている漢方薬です。

当院の患者さんで、半夏厚朴湯がよく効いた患者さんがいたので報告します。

症例:90代女性

診察の度に、「喉が詰まる」「トカトカする」「夜中に起きてしまって眠れない」「トイレが近い」「胸がつかえる」「セーターの裏に虫がいる」「踵が痛い」などのさまざまな訴えがありました。

これらの症状に対しては西洋薬で対応していましたが、それほど効果は実感できませんでした。とある診察時に思い立ち、半夏厚朴湯を処方してみました。すると、2週間後の診察では、上述したさまざまな訴えが全体的に減りました。

この方は、もともとたまに胸痛があり、その都度ニトロールを使用していました。ニトロールの代わりに偽薬を使っても効果があるという、心理的要因が強いと思われていた方でした。半夏厚朴湯を処方してからは、胸痛もなくなり、ニトロールもほとんど使わなくなりました。

本症例のように、咽喉部の違和感に加えて、胸痛などの狭心症様症状、動悸、頻尿などに心理的要因が関与していると思われる場合は、半夏厚朴湯を試してみると良いかもしれません。甘草が含まれていないこともあり、副作用はそれほど気にしないで処方できます。

また、半夏厚朴湯には誤嚥性肺炎の予防効果もあると言われているので、高齢者にはそれを狙って処方もできます。

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