在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

ハイドロリリース(筋膜リリース)を科学する16~腰痛と多裂筋委縮の関係 〜人知の限界と治療の選択肢〜

写真の説明はありません。

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腰痛患者さんのMRIを撮影すると、多裂筋の委縮が顕著にみられることが分かります。報告によると、腰痛患者の約80%に多裂筋の委縮が生じているとされています。しかし、この関連性を明確に説明した医学書や論文を見つけることはできませんでした。

では、なぜ腰痛と多裂筋の委縮が関連するのでしょうか? 廃用性委縮(使わないことによる筋肉の萎縮)が一因と考えられますが、特に多裂筋だけが特異的に委縮する理由は何なのでしょう?

椎間関節の変性と神経の絞扼

私の考えとして、一つの重要な要因は 椎間関節の変性肥厚 ではないかと思います。高齢の腰痛患者のレントゲンをみると、ほぼ例外なく椎間関節の変性がみられます。手術で実際に観察する椎間関節は、まるで 岩のように硬化 しています。

さらに、この椎間関節の近くには 脊髄神経後枝内側枝 が走行しています。この神経は 傍脊柱筋、臀部、大腿外側部 を支配しており、腰痛の潜在的な原因となり得ます。

肥厚した椎間関節がこの神経を絞扼すると、後部皮神経絞扼症候群(POCNES) と呼ばれる状態が発生します。当然ながら、神経が圧迫されることで支配筋の委縮が生じるのは自然な流れでしょう。

筋膜リリース(ハイドロリリース)は無力?

POCNESのような神経絞扼による痛みに対して、筋膜リリース(ハイドロリリース)はほぼ無力 だと私は考えます。この場合、ルートブロック などの対処的治療が有効でしょう。

さらに、外科的なアプローチとして手術で絞扼を解除するという方法もありますが、これは椎間関節を破壊するPLIF(後方腰椎固定術)などの大がかりな手術を伴うため、侵襲性が高くなります。こうしたケースは、外科治療の限界を示す一例とも言えるでしょう。

加齢現象としての関節変性

椎間関節の肥厚変性は 加齢による自然な変化 であり、必ずしも「病気」ではありません。つまり、人間の身体に対する医学的介入には限界があるのです。

ここで、手塚治虫ブラック・ジャック の一節を思い出します。

「人が人の身体をどうにでもできるなど、思い上がりも甚だしい」

まさに、医学の限界を示す言葉ではないでしょうか。だからこそ、ルートブロックなどの対処的な対応も、治療の選択肢のひとつとして十分に価値があるのです。

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