在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者の糖尿病治療、実は“下げすぎ”が危険?

画像が生成されました~在宅医療の現場から考える、ちょうどいい血糖値とは~

糖尿病は、放っておくとさまざまな病気の引き金になります。
たとえば、透析へ移行する慢性腎不全の最大の原因は「糖尿病性腎症」。さらに、心筋梗塞脳梗塞などの血管障害とも深く関わっています。

中でも高齢者では、軽度の糖尿病であっても、感染症などをきっかけに「糖尿病性ケトアシドーシス」といった命に関わる状態に陥ることもあります。

しかし——糖尿病治療は、「ただ血糖値を下げればよい」というものではありません。


高齢者にとって“低血糖”こそ命取り

糖尿病では一般に「高血糖が問題」とされますが、高齢者ではむしろ“低血糖”がはるかに危険です。

なぜなら、高血糖はすぐには命に関わりませんが、低血糖脳のエネルギー源であるブドウ糖を遮断してしまうため、意識障害、けいれん、最悪の場合は死に至ることもあります。低血糖は、“脳の酸素欠乏”にも匹敵する深刻な状態です。


「7%未満」は目指さなくていい?

日本糖尿病学会と日本老年医学会は、「高齢者における血糖コントロール目標」にHbA1cの“下限”を設定しています。これは、低血糖のリスクを避けるための極めて重要な指針です。

  • 合併症予防のためには HbA1c 7.0%未満 が推奨されますが、
    その効果が現れるのは10~15年後。

  • 余命がそれ以内であれば、厳密なコントロールはむしろリスクとなります。

在宅医療を受けているような高齢の方々にとっては、HbA1c 7~9%程度で安定している状態が理想的です。あえて7%未満を目指さない——これが大切な考え方です。


低血糖リスクの少ない薬を選ぶ

高齢の方には、低血糖を起こしにくい薬を選ぶことが大原則です。以下に、在宅医療の現場でよく使われる薬と、そのポイントをまとめました。


① メトホルミン(ビグアナイド薬)

  • 第一選択薬として広く使用

  • 心血管イベント予防、体重減少、低血糖リスク少ない

  • 腎機能に応じた使用が必要(eGFR30未満は禁忌)

  • 75歳以上では原則新規投与は控える

  • 副作用:下痢(約15%)、まれに乳酸アシドーシス


② SGLT2阻害薬/DPP-4阻害薬

  • SGLT2阻害薬:尿に糖を捨てる薬。脱水や尿路感染症に注意
     ※eGFR45未満では効果が弱い

  • DPP-4阻害薬:腎機能に応じて選択可能(胆汁排泄型あり)
     副作用が少なく、1日1回で服用可能


③ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)


④ GLP-1受容体作動薬(週1回注射)

  • トルリシティ」など週1回注射製剤あり
     在宅での定期投与に活用できる

  • DPP-4阻害薬との併用は不可


BOT(Basal supported Oral Therapy)


⑥ 避けたい薬


最も大切なのは「その人らしさ」を守る治療

高齢者の糖尿病治療では、“血糖値の数値”だけにとらわれず、生活の質(QOL)や本人の状態に合わせた治療が求められます。

在宅医療の現場では、「安全に、穏やかに、暮らしを支える」ことが一番の目的です。HbA1cを7%未満に下げるよりも、「ちょうどよい血糖値」を一緒に探していくことが重要だと考えています。


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📷 本記事内の写真は、逗子・葉山・鎌倉の美しい風景を撮影されている山内様によるものです。