超高齢社会を迎えた日本では、高齢者の転倒・骨折が大きな問題になっています。
特に夜間の転倒は、大腿骨骨折や急性硬膜下血腫など、命に関わる重篤な事故につながることもあります。
そのため、病院や介護施設では抑制同意書を入院時に取得し、夜間帯はベッドから動けないような体制を取ることがあります。現場にいると「これは本当に人道的なのか」と感じることもありますが、「転倒させない」ことが最優先事項となるのが実情です。
投薬が転倒の原因になることも
転倒の原因は様々ですが、薬の影響でふらつきが起こるケースは決して少なくありません。
特に注意が必要なのが、ベンゾジアゼピン系睡眠薬です。
非ベンゾジアゼピン系の薬は「超短時間作用型」とも呼ばれ、作用時間が短いことから高齢者にも比較的安全とされ、よく使用されています。実際、私自身も研修医時代に不眠でゾルピデムを使っていた経験があります。
非ベンゾジアゼピンも“完全に安全”ではない
しかし、こうした「安全」とされる薬でも、高齢者では代謝・排泄機能が低下しているため、想定以上に体内に残ってしまうことがあります。
たとえば、ゾルピデムの添付文書には「高齢者では半減期が2.2倍になる」と明記されています。つまり、若い人の2時間が、高齢者では4時間以上に延びる可能性があるのです。
さらに、薬理的には筋弛緩作用が少ないとされているゾルピデムでも、実際には大腿骨骨折のリスクが2.23倍、けが全般のリスクが1.89倍に増えるという報告もあり、転倒を引き起こす作用は無視できません。
私も試しに内服してみたことがありますが、明らかに筋肉が弛緩する感覚がありました。
結論として、**非ベンゾジアゼピンは“ベンゾジアゼピンとは違う”わけではなく、むしろ“ベンゾジアゼピンに似た薬”**として捉えるべきかもしれません。
高齢者の不眠にどう向き合うか
高齢者の睡眠は、日中の活動量や不安・環境など多くの要素に影響されます。
薬を使うことも一つの選択肢ですが、「転倒リスク」という大きな副作用も常に意識しなければなりません。
在宅診療で学ぶ!睡眠と転倒の関係
在宅医療の現場では、「薬に頼らない睡眠環境の整備」や「身体機能の維持」、「介護者との連携」などが鍵になります。
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