在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

尿路感染症(膀胱炎)の診断と治療 ― JAMAレビューから在宅医療での実践まで ―

JAMA誌に、在宅診療・外来における尿路感染症(UTI)の診断と治療に関する重要なレビュー論文が掲載されました。
私たち在宅医にとっても遭遇頻度の高い“いわゆる膀胱炎”への対応について、非常に実践的な知見が示されています。今回、そのエッセンスをまとめました。


🔎 概要:なぜこの論文が重要か?

  • 尿路感染症は、外来での抗菌薬使用の最も一般的な理由のひとつ

  • しかし、薬剤耐性菌の増加により、従来の治療法が通用しないケースも増えています

  • 特に在宅医療の現場では、培養なしでの即時対応が求められることも多く、経験と知見に基づく判断が重要です


📚 対象と方法(JAMAレビューのエビデンス

  • 27件のRCT(6463人)6つのシステマティックレビュー、**11件の観察研究(25万人以上)**を対象とした包括的レビュー

  • 若年女性・糖尿病女性・男性における急性膀胱炎の診断と治療が中心テーマ


🩺 診断:培養しない診療も「あり」

  • 症状ベース診断が有効:
     少なくとも2つの症状(排尿時痛・切迫感・頻尿)があり、膣分泌なしであれば診断確率は90%以上

  • 検尿や培養は不要?
     あるRCTでは、検尿・培養に基づく治療が経験的治療よりもアウトカムを改善しないという結果も

  • 在宅診療では、尿培養なしでの管理が許容されるケースが多い
     ただし、以下の場合は要培養:
      ✔️ 6ヶ月以内の再発
      ✔️ 合併症を伴う感染
      ✔️ 多剤耐性の既往


💊 治療:第一選択とすべき薬は?

急性単純膀胱炎(女性)第一選択薬

  • ST合剤(160/800mg 1日2回×3日間)

  • ニトロフラントイン(100mg 1日2回×5-7日間)

  • ホスホマイシン・トロメタモール(3g単回)

避けるべき抗菌薬

  • フルオロキノロンキノロン系)
     効果はあるが、より重篤感染症に温存すべき

  • βラクタム系(アモキシシリン/クラブラン酸など)
     第一選択には不適切との位置づけ

糖尿病女性:非糖尿病者と同様に治療して問題なし

男性の場合:7〜14日間の治療が検討されるが、エビデンスは限られている


📌 在宅医療でよくある「ギャップ」とその見直し

在宅医療の現場では、
「とりあえずキノロン
「第3世代セフェムを投与」
「症状あれば培養」
……という対応が慣例的に行われていることもあります。

しかし今回のJAMAレビューでは、

  • 検尿や培養にこだわらない

  • 広域抗菌薬の温存を意識する

  • 電話診療・患者主導治療(患者先行型治療)も容認

など、現代的・合理的な診療アプローチが紹介されており、我々在宅医も改めて学ぶべき内容だと感じました。


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