在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

【解説】頚肩部痛へのHydrorelease(ハイドロリリース)治療

画像が生成されました

【解説】頚肩部痛へのHydrorelease(ハイドロリリース)治療

―「四十肩・五十肩」の誤解と神経根症の診かた―

❌ 「四十肩・五十肩」という言葉は使うべきではない

整形外科医が「四十肩」「五十肩」という表現を使うと、かえって患者さんにとって不利益になることがあります。これは、曖昧な診断名が適切な治療介入の機会を遅らせてしまうためです。

肩の痛みがあるときは、原因が「肩」なのか「首」なのか、まず正しく評価することが重要です。


✅ 肩か首か? 簡単な見分け方

  • 腕を動かすと痛い → 肩関節由来

  • 首を動かして肩が痛い → 頚椎由来(神経根症など)

この判断は診断と治療の第一歩です。


📋 代表的な身体所見と臨床判断ポイント

  • Spurlingテスト
    頚椎性神経根症の評価に有用。
    → 感度95%、特異度94%

  • Shoulder Abduction Relief SignSARS
    手を頭の上に置くと症状が軽くなるサイン。
    → C6神経根症に特徴的ですが、C7でも陽性になることがあります。


💉 Hydrorelease(ハイドロリリース)の臨床応用

  • SAB注射で改善しない肩痛
     → 三角筋と棘下筋の間のfasciaにHydrorelease

  • 首が回らない症状
     → 僧帽筋と肩甲挙筋の間のfasciaにHydroreleaseで可動性改善が得られることも


📚 頚部神経根症の基礎知識

  • 好発年齢: 50~60代(男性に多い)

  • 原因:
     変形性脊椎症(約68%)
     椎間板ヘルニア(約22%)

  • 自然経過:
     88%が1ヶ月以内に自然軽快
     4〜5年後、90%が無症状または軽度
     再発率:12.5%(1〜2年以内)


🧠 治療と超音波ガイド下神経根ブロック

  • 注射のランドマーク:頸椎横突起(U字型)

    • C7:前結節なし

    • C4〜C6:下へ行くほど神経根が太くなり、結節間溝が広くなる

    • C6:神経根の分岐が速い

    • C7:隣接する椎骨動脈に注意

  • 基本原則:神経根には直接刺さず、局所麻酔薬で包むように注入


🧠 頻度と障害神経根の分布

神経根 頻度(%)
C5 2–6.6
C6 17–19
C7 46–69
C8 6–10

C6〜C7で全体の約8割を占める

  • 背部痛の部位と神経根
     肩甲棘上部:C5・C6、肩甲棘下部:C7・C8

  • 放散痛の部位と神経根
     母指:C6、中指:C7、小指:C8


🎥 YouTubeでも詳しく解説中!

👉 内田賢一の在宅医療チャンネル - YouTube
神経難病や在宅医療の現場での実践的な知識を、動画でわかりやすくお届けしています。チャンネル登録・ご視聴をぜひ!


🏠 さくら在宅クリニックについて

逗子・葉山・横須賀・鎌倉を中心に、神経難病やがん末期の在宅医療を行っています。
多職種チームが一丸となり、ご自宅での療養をサポートします。

🔗 公式ホームページはこちら