在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について35~徹底的に減薬 ― BPSD悪化を防ぐために

画像が生成されました厚生労働省の「安心と希望の介護ビジョン」検討会で、有識者から BPSD(認知症の行動・心理症状)悪化の主な要因 として以下の3つが挙げられました。

  1. 薬剤(37.7%)

  2. 身体合併症(23.0%)

  3. 家族・介護環境(10.7%)

つまり、最も大きな悪化要因は 薬剤=処方薬 です。
薬は医師の処方がなければ手に入りませんから、言い換えれば「医者が悪い」と言わざるを得ない現実があります。アルコールの影響を除外したあとは、まず 減薬を最優先 に検討すべきなのです。


BPSDを悪化させやすい薬

精神症状を悪化させる代表的な薬は、いわゆる「薬剤起因性老年症候群」を引き起こす薬です。

これらはいずれも 認知機能低下やせん妄を誘発 し、結果的にBPSDを悪化させる要因になります。真っ先に見直すべき薬です。


認知症薬の副作用にも注意

意外かもしれませんが、認知症薬そのものも精神症状を悪化させることがあります。

添付文書には、以下の副作用が明記されています。

  • 興奮、不穏、不眠、易怒性

  • 幻覚、攻撃性、せん妄、妄想

  • 激越、錯乱、抑うつ など

特にリバスチグミンでは「幻覚や錯乱が出たら中止すべき」と明記されており、メマンチンでも同様です。

厚労省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)に報告されている症例の中には、抗認知症薬を被疑薬とする 身体的暴行や殺人事件 まで含まれています。もちろん薬単独の作用とは限りませんが、少なくとも「薬がきっかけで凶暴化した可能性」を否定できません。


処方を見直す勇気

認知症薬を中止すると「効果が失われるのでは」と心配されるかもしれません。
しかし実際の薬効はわずかであり、安全を優先して減薬・中止することが妥当なケースも少なくありません。

「薬が症状を悪化させていないか?」
この視点を常に持ち、勇気をもって処方を見直すことが、患者さんと家族の安心につながります。


まとめ

  • BPSD悪化の最大要因は「薬剤」

  • ヒスタミン薬・抗うつ薬・抗コリン薬・H2遮断薬・ベンゾ系は要注意

  • 認知症薬も副作用で精神症状を悪化させることがある

  • 安全のためには「徹底的に減薬」を優先する姿勢が重要

認知症ケアにおいては「薬を増やすより減らす」が原則です。


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