
認知症の行動・心理症状(BPSD)は、物忘れなどの中核症状がきっかけで生じることが多いため、
「認知機能を改善する抗認知症薬を使えば、間接的にBPSDも改善できるのでは?」
という考え方があります。
日本の「BPSDガイドライン(第2版)」でも、抗認知症薬をBPSDへの第一選択薬として挙げています。
しかし、本当に科学的根拠があるのでしょうか?
海外ガイドラインとの違い
もし確かな根拠があるなら、各国のガイドラインも同様になっているはずです。
臨床試験とレビューの結果
精神症状をもつアルツハイマー病患者を対象にした研究をまとめると:
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コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル・リバスチグミンなど)
→ ごく軽度の改善効果を示す報告もあるが、無効とする研究も多い -
メマンチン
→ 系統的レビューでも「BPSDへの効果は期待できない」と結論づけられている
また、コリンエステラーゼ阻害薬では 有害事象による中断率が有意に高い(相対リスク1.64) ことも報告されています。
ガイドラインに抗認知症薬が載った理由
BPSDガイドラインで抗認知症薬が第一選択薬とされた理由は大きく2つ:
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系統的レビューで「小さな効果」が示された
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第1版からの踏襲
つまり、強固な科学的根拠があるわけではなく、過去の流れをそのまま引き継いだ側面が大きいのです。
個別の臨床試験の結果(例)
このように、研究ごとに結果はバラバラで、「確実に効く」とは言えないのが現状です。
まとめ
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抗認知症薬がBPSDに有効かどうかは、科学的にまだ不確実
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軽度の改善を示す研究もあるが、無効とする研究も多い
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有害事象による中断リスクは無視できない
「まず抗認知症薬を」とする日本のガイドラインは、根拠が十分とは言えない というのが現状です。
BPSDへの対応は、薬よりもまず 原因の除外・環境調整・非薬物療法 を優先し、薬物治療は慎重に検討する必要があります。
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