認知症治療薬として広く用いられているコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)。
記憶障害への効果は知られていますが、「抑うつ」や「アパシー(意欲低下)」などの精神症状にも効くのでしょうか?
🔍 ガイドラインにおける記載
厚生労働省の「BPSD(認知症の行動・心理症状)ガイドライン(第1版)」の基になった研究報告書では、次のような記載があります。
ただし、ここで引用されている文献を確認すると、ドネペジルそのもののエビデンスは示されていません。
参照されている根拠論文は「ガランタミン国内第Ⅲ相試験」と「リバスチグミン国内第Ⅲ相試験」であり、ドネペジルに関するデータは含まれていないのです。
📚 科学的根拠は?
以上のことから、抑うつ症状やアパシーにコリンエステラーゼ阻害薬が有効であるという明確な科学的根拠は存在しません。
一方で、アパシーに対する薬物療法を検討した**系統的レビュー(Gonzalez et al., 2012)**では、
複数の臨床試験をまとめた結果として「コリンエステラーゼ阻害薬が最も有効」とされています。
つまり、完全に否定も肯定もできない ― 研究の段階にある領域と言えます。
⚠️ 実臨床で注意すべき点
ガイドライン上では「BPSDに対して抗認知症薬を第一選択とする」とされていますが、
実際にはその根拠は十分とは言えず、効果が期待できないケースも多いのが現状です。
むしろ、副作用として以下のような症状が出現することがあります。
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興奮・不穏・不眠・眠気
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易怒性・幻覚・攻撃性
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せん妄・妄想・多動
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抑うつ・無感情 など
医師が「第一選択薬だから」と形式的に投与を続けると、
かえって精神症状が悪化する危険もあることを理解しておく必要があります。
🩺 まとめ
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系統的レビューでは有効とされる報告もあるが、結果は一貫していない。
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抗認知症薬をBPSDに対して第一選択とすることは慎重に考えるべき。
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精神症状の悪化など、副作用への配慮が重要。
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