在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する46~エコーで見るDVT⑤ ― 検査法と実践のポイント

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深部静脈血栓症(DVT)は、非侵襲的に診断できる代表的疾患のひとつです。
その評価において、エコー(超音波)は最も有用かつ即時性の高い検査手段です。
今回は、DVTの**エコー検査法(全下肢静脈法)**について解説します。


🔍 DVTのエコー検査法 ― 2つのアプローチ

DVT評価には、観察範囲の異なる2つの方法があります。

① 全下肢静脈法(Whole-leg venous ultrasound)

  • 骨盤部の総腸骨静脈から下腿ひらめ静脈までを系統的に観察

  • 急性期・慢性期ともに評価でき、再検不要

  • 診療・在宅領域でも標準的な手技

② 2点圧迫法(2-point CUS:compression ultrasonography)

  • **鼠径部(総大腿静脈)と膝窩部(膝窩静脈)**の2か所を限定的に圧迫評価

  • 時間が限られる救急現場向けの簡易法

  • 初回陰性でも1週間後の再検が必須

💡 本稿では、より詳細な評価が可能な 全下肢静脈法 を中心に解説します。


🩻 観察対象と静脈の基本構造

下肢の静脈は**筋膜より浅い「表在静脈」**と、**筋膜より深い「深部静脈」**に大別されます。
DVTの対象はこの「深部静脈」であり、総腸骨静脈 → 大腿静脈 → 膝窩静脈 → 下腿静脈の順に観察します。

⚠️ 膝窩静脈以下では、1本の動脈に対して2本の静脈が平行走行することに注意しましょう(伴走静脈)。


⚙️ 使用する装置・設定のポイント

① プローブの選択

観察部位 使用プローブ 周波数帯
下肢(大腿〜下腿) リニア型 5〜9 MHz
骨盤〜下腹部 コンベックス型 3〜5 MHz

高周波ほど解像度は高いが、透過力は低下します。
表在〜中層観察にはリニア型、高深度部位(骨盤内)にはコンベックス型を使い分けます。

② 撮像補助機能

  • カラードプラ機能:血流確認に有用。静脈血流は遅いため、流速レンジ10 cm/s以下に設定。

  • ティッシュハーモニックイメージング(THI):微弱な輝度差を描出しやすく、血栓の可視性を向上

カラードプラがなくてもDVT診断は可能ですが、血流消失の確認には非常に有用です。


🧍‍♂️ 患者体位とセッティング

  • 基本体位:仰臥位(背臥位)

  • 下肢の位置:外旋・軽度屈曲位(大腿内側の観察を容易に)

  • 膝窩部以下:可能であれば座位にして末梢静脈を拡張させると描出性が向上

💡 体位によって静脈径や血流状態が変化するため、再検時も同じ条件で実施することが大切です。


🩺 検査手順(全下肢静脈法)

  1. ゲルを十分に塗布し、B-modeで静脈走行を追う。

  2. 短軸像で圧迫法を実施

    • プローブを垂直に当て、静脈内腔が完全に潰れるかを確認。

    • 潰れなければ血栓あり。

  3. 長軸像で血栓範囲・先端可動性を確認。

  4. 必要に応じてカラードプラで血流確認。

    • 静脈血流が欠如していれば閉塞型を示唆。

  5. 骨盤部〜下腿まで連続走査。


🧠 エコー像で見る血栓の経時的変化

時期 エコー輝度 内部性状 圧迫性
急性期 低エコー(黒っぽい) 均一・柔らかい わずかに潰れる〜潰れない
亜急性期 中等度輝度 不均一化 弾性低下
慢性期 高エコー(白く) 線維化・器質化 硬く圧迫不可、壁癒着あり

⚠️ 慢性化した血栓では血流再開を伴う場合もあり、
「再疎通性DVT」や「ポストサーボティックシンドローム」への移行にも注意します。


📈 検査時の注意とコツ

  • 大腿部から膝窩部までは静脈走行を連続的に観察する。

  • 下腿では伴走静脈を区別して確認

  • 血栓を認めた場合は、

    • 部位(近位/遠位)

    • 範囲

    • 可動性(浮遊性)
      を必ず記録する。

💡 浮遊性血栓はPEのリスクが高いため、即時報告・治療連携が必要です。


🩶まとめ ― DVTエコー評価の臨床的意義

  • DVTは下肢の腫脹・疼痛・浮腫の原因として常に鑑別すべき疾患。

  • エコーにより、即時・非侵襲的に診断・評価・経過観察が可能。

  • 全下肢静脈法を習得することで、在宅・外来・病棟いずれでも安全なスクリーニングが行える。

  • カラードプラやTHIなどの機能を活用すれば、より精度の高い診断が期待できます。


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