在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について46~【抑肝散・トラゾドン・抗精神病薬】

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―BPSD(認知症の行動・心理症状)への薬物治療をどう考えるか―

非薬物的アプローチ(家族・介護環境の調整)を行ってもBPSDが落ち着かない場合、初めて薬物療法の検討が必要になります。ここでは、漢方薬抑肝散を中心に、科学的根拠と注意点を整理します。


■ 抑肝散の特徴と効果

抑肝散(よくかんさん)は、易怒性・興奮・暴言・暴力・幻覚・妄想などのBPSD症状に一定の効果を示すことがあるとされています。
無作為化比較試験のレビューでは、プラセボ群と比較してBPSD全般、とくに妄想・幻覚・焦燥/攻撃性の改善が報告されました。副作用による中止率もプラセボと差がなく、安全性が高い点が特徴です。

ただし、認知機能(MMSEスコア)を改善する効果は確認されていません。
さらに、唯一の二重盲検試験では、アルツハイマー病のBPSDに対して有意差が認められなかったという結果が出ています。
したがって、「効く場合もあるが、確実ではない」薬といえます。


■ 使用上の注意と投与法

抑肝散には甘草が含まれるため、カリウム血症・浮腫・高血圧・不整脈に注意が必要です。
特に長期投与を行う場合は、定期的な血中カリウム測定を行いましょう。

  • 初期量:1日1包から開始

  • 効果があれば:1日3包まで漸増

  • 効果発現:1〜2週間で見られることが多い

  • 4週間で変化なければ効果なしと判断し中止

複数の漢方を併用するのは避け、他の方剤を中止してから抑肝散を開始するのが原則です。


抗精神病薬との位置づけ

抗精神病薬には一定のBPSD改善効果がある一方で、副作用(転倒・脳卒中・死亡リスク上昇)が問題になります。
抑肝散は安全性の面で優れていますが、抗精神病薬の代替薬とは言えません。
日本老年医学会のガイドラインでは、「非薬物療法で改善が得られない場合に使用を考慮」とされ、アルツハイマー病以外の認知症のBPSDに対する第一選択薬としても妥当と考えられます。


■ 使用を避けるべきケース

  • 明確なアルツハイマー認知症と診断されている場合

  • 認知症薬(ドネペジル・メマンチンなど)を併用している場合

  • 自傷他害など緊急性の高いBPSDには不向き(即効性がないため)

  • 粉薬が苦手な方


■ まとめ

抑肝散は、アルツハイマー病以外の認知症に伴うBPSDにおいて、安全に試すことができる選択肢です。
ただし、「効く場合と効かない場合がある」「効果なければ速やかに中止」「効果があっても漸減を試みる」という基本原則を守ることが大切です。
家族や介護者の負担軽減を目的に、薬物療法と併用しながら短期的に使用することが望まれます。


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