
認知症のBPSD(行動・心理症状)の中でも、睡眠障害は家族や介護者を最も疲弊させる症状の一つです。
「夜間の徘徊や覚醒で同居家族が眠れない」──その対応に悩む現場は少なくありません。
■ ベンゾジアゼピン系睡眠薬は使ってはいけない
これまで睡眠障害に使われてきたベンゾジアゼピン受容体作動薬(例:マイスリー、ハルシオンなど)は、
認知症患者に対しては科学的根拠がなく、むしろ害があることが分かっています。
その理由は以下の通りです。
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認知機能をさらに低下させる
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せん妄・転倒・骨折のリスクを高める
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依存性を生じる
したがって、認知症の人の睡眠障害に使ってはいけない薬と考えるべきです。
■ 科学的根拠があるのはトラゾドンだけ
認知症における睡眠障害治療薬の有効性を検証したレビューでは、
臨床試験が行われたのは メラトニン・ラメルテオン・トラゾドンの3剤のみ。
そのうち、トラゾドンだけがプラセボより有効であり、
かつ安全性も高いことが報告されています(被験者30名の小規模試験ですが、重要な結果です)。
■ トラゾドンの使い方と注意点
トラゾドンはもともと抗うつ薬ですが、低用量で睡眠導入効果を示します。
認知症の夜間不眠に対しては、第一選択薬として位置づけられます。
使用方法(実臨床の目安)
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開始量:25mg/日(就寝前)
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効果が不十分なら50mg/日まで漸増
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最大で75mg/日程度まで増量可(ただし適応外使用)
注意すべき副作用
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過鎮静・ふらつき・せん妄
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まれに持続勃起症(特に男性)
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躁転(気分の高揚)やかえって不眠になる場合も
服用後に具合が悪くなった場合は、すぐに中止するよう家族へも事前に説明が必要です。
■ 他の睡眠薬との比較
つまり、現時点でエビデンスのある睡眠薬はトラゾドンだけです。
■ トラゾドンは「万能薬」ではない
BPSD全般に対しては、トラゾドンがプラセボを上回る効果を示したという明確な証拠はありません。
したがって、トラゾドンはあくまで「夜間の不眠」に限定して使う薬と理解すべきです。
昼夜逆転・徘徊・夜間せん妄などの改善を期待して漫然と使うのではなく、
「夜眠れない」という明確な症状がある場合のみ使用し、
効果がなければ速やかに中止することが重要です。
■ まとめ
介護者の睡眠を守ることは、結果的に患者のQOL(生活の質)を高めることにつながります。
安全性を重視しながら、「眠る力」を取り戻すサポートを目指しましょう。
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