在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について51~【認知症ケアの基本】

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―外出機会が乏しい人にはデイサービスを―

認知症の人にとって、外出や社会的交流の機会は「脳の活性化」と「生活リズムの維持」に直結します。
仕事や地域活動がなく、家に閉じこもりがちな場合は、デイサービスの利用が最も効果的な非薬物療法です。


■ デイサービスは“非薬物療法”の中心

英国のNICE(国立医療技術評価機構)認知症ガイドラインでは、軽度〜中等度の認知症に対して、

「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy:CST)への参加機会を与えるべき」
と明記されています。

日本の介護保険制度でいうデイサービスは、まさにこのCSTに相当する取り組みです。


■ 科学的根拠が示す“デイサービスの効果”

日本で行われた認知症治療薬の臨床試験解析(GAL-JPNシリーズ・メマンチン国内第Ⅲ相試験)では、
薬を使っていないプラセボ群の中でも、介護サービスを利用していた人のほうが

  • 全般的臨床評価(CIBIC-plus)

  • 認知機能スコア(SIB)
    でより良い結果を示しました。

つまり、介護サービス(デイサービス)そのものが治療的効果をもたらしているということです。


■ 抗認知症薬よりも「わかりやすい効果」

認知症薬の効果は緩やかで、本人や家族には実感しづらいことが多いですが、
デイサービスは生活に直接作用する介入です。

  • 活気が出た

  • 会話が増えた

  • 表情が明るくなった

といった変化が、家族にもはっきり見えるのが特徴です。

さらに、薬剤のような厳密な診断や副作用管理が不要であり、
「施設が合わなければ変更できる」という柔軟さも、現場の大きな利点です。
医師にとっても、現実的で安全な第一選択といえるでしょう。


■ 利用を勧めるときのポイント

デイサービスの目的は「介護者の休息」ではなく、

認知症に伴う廃用症候群の予防と改善」

であることを、本人と家族に明確に説明することが重要です。
「自分が家にいない方がみんな楽なんだ」と誤解されると、拒否的な態度につながることがあります。

そのためには──

  • 医師が治療の一環として位置づける

  • データや体験を交えて説明する

  • 本人の得意な活動(歌、手芸、運動など)に合わせて施設を選ぶ

といった工夫が有効です。


■ 嫌がる場合の代替案

どうしてもデイサービスを拒む場合は、次のような社会的活動の参加を促します。

  • 趣味・サークル活動(囲碁、書道、カラオケなど)

  • 地域の高齢者クラブ・生涯学習講座

  • 敬老会、ふれあいサロン、体操教室、グランドゴルフ

  • 散歩や買い物などの日常外出

重要なのは、「外に出ること」や「人と関わること」。
刺激がある生活=認知機能の維持につながります。


■ 医師による“具体的な課題設定”

「外に出てください」「運動してください」では抽象的すぎて実行されません。
医師が具体的な課題として指示することが重要です。

  • 「週2回デイサービスに通いましょう」

  • 「毎日15分、散歩を続けましょう」

実行できたらしっかり褒めて励ますことが継続の鍵です。
慣れてきたら「もう少し増やしてみましょう」と段階的に促していきます。


🌿 まとめ

  • 外出機会の乏しい人にはデイサービスを積極的に活用

  • 認知症治療薬よりも実感しやすく、安全な非薬物療法

  • 目的は「介護者の休息」ではなく「廃用症候群の予防」

  • 嫌がる場合は代替の社会的活動を提案

  • 医師は「週○回」「○分」など具体的に課題を設定する

外出の機会を持つことは、認知症ケアの中核です。
薬よりも、まず「人と関わる時間」を処方しましょう。


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