在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について52~【認知症ケアの基本】 ―家庭で“失敗体験”をさせない、そして“役割”を持ってもらう―

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認知症の人が家庭で安心して暮らし続けるためには、本人の尊厳を守る環境づくりが何より大切です。
そのために、家庭内で守るべき2つの原則があります。


① 本人に「失敗体験」をさせない

できないことを無理にさせたり、難しい課題を与え続けたりすると、
本人の自信と意欲を失わせる結果になります。

  • 料理の段取りがうまくできないのに手順を一人で任せる

  • 複雑な計算ドリルを延々とやらせる

  • 同じ質問に叱責で返す

これらはすべて、本人の「できなかった」という体験を積み重ねることになり、
不安・焦燥・抑うつを悪化させるBPSDの引き金になりかねません。

家族にはこう伝えましょう。

「失敗すればするほど、不安が強くなります。」
「難しい課題を無理にさせても、認知機能の改善にはつながりません。」

本人が“できる範囲で達成感を得られる活動”を選び、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。


② 本人にできる家事をしてもらう

何もしない時間が長くなると、心身機能が低下していく「廃用症候群」を招きます。
頼まれごとがなく、ただ一日中ぼんやり過ごすだけでも、BPSD(不安・焦燥・昼夜逆転など)のリスクが高まります。

そのため、本人にできる範囲で家事や役割を担ってもらうことが重要です。

たとえば:

  • 包丁で野菜を切る、皮をむく

  • 鍋で煮る・焼く・炒める(見守り下で)

  • 掃除機をかける、洗濯物をたたむ

  • 皿洗い、ゴミ出し、庭の草むしり など

たとえ時間がかかっても、「本人にやってもらう」こと自体が治療です。

「ご家族が全部やったほうが早いですが、本人のためにあえて時間をかけることが大切なんです。」

そう伝えると、家族の理解も得やすくなります。
生活そのものがリハビリであり、治療なのです。


🌿 POINTまとめ

観点 内容
危険動作の中止 運転・火の不始末は早期に制限
外出・活動 デイサービス・趣味活動で社会的刺激を維持
認知刺激 NICEガイドラインも推奨する「集団認知刺激療法」的活動を
学習課題 計算ドリルなどの“強制学習”は禁止
家庭対応 失敗体験を避け、家事・役割で達成感を
継続の支援 仕事・社会参加は危険がなければ継続を

💬 医師から家族へのメッセージ

認知症の方にとって「できない」と言われることほど辛いことはありません。
家族が“支える”ことに加え、“任せる勇気”を持つことが、家庭での安定した生活につながります。
本人に「まだ自分の居場所がある」と感じてもらえるような日常づくりを心がけましょう。


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