在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する49~エコーでアプローチする胸腔・腹腔の基礎知識

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〜胸水・腹水の「たまりやすい場所」を理解する〜

胸腔と腹腔の構造

胸腔は、肺の表面を覆う臓側胸膜と、胸郭内側を覆う壁側胸膜の間にある空間です。
ここに液体がたまると「胸水」と呼ばれます。少量の胸水は肺の底(横隔膜に近い背側)にたまり、次第に肺全体を取り囲むように広がります。量が増えると、肺を圧迫して呼吸苦や無気肺を引き起こすこともあります。

一方、腹腔は臓器の表面を覆う臓側腹膜腹壁内側を覆う壁側腹膜の間の空間で、ひとつながりの体腔です。
臓器が入り組んでいるため、液体は特定の「たまりやすい場所(リセス)」に集まりやすく、以下のような部位が代表的です。

  • 右横隔膜下腔(肝臓の上)

  • モリソン窩(肝と右腎の間)

  • 左右の傍結腸溝

  • ダグラス窩(骨盤底の最も低い部分)


仰臥位(あお向け)での液体貯留部位

患者さんが仰臥位になると、液体は重力により最も低い位置に集まります。
胸腔では横隔膜上部の肺底部背側、腹腔ではダグラス窩 → 横隔膜下 → モリソン窩の順に貯留しやすいとされています。
そのため、これらの部位を意識して走査することで、少量の液体も見逃しにくくなります。


使用するエコー装置とプローブの選び方

胸水・腹水の観察には、**深部まで描出できる低周波コンベックス型(3〜5MHz)のプローブが標準的です。
液体はエコー上で
無エコー域(黒く抜けた部分)**として描出されます。
また、少量の液体貯留を疑う場合は、**高周波リニア型(5〜9MHz)**を併用すると、浅い部位の観察に有効です。

近年の機種に搭載されている「ティッシュハーモニックイメージ」機能を使うと、液体と組織のコントラストが明瞭になり、胸水・腹水をよりクリアに描出できます。


プローブの当て方と観察ポイント

胸水・腹水の検査は、基本的に「液体がたまりやすい部位を狙う」ことがポイントです。

  • 胸腔:後腋窩線(脇の後ろ寄り)から、肋骨のすき間(肋間)を通して斜めにビームを入射します。

  • 腹腔:仰臥位で、上腹部・側腹部・下腹部を順にスキャン。
     特に右側では**肝臓と腎臓の間(モリソン窩)**を確認します。

横隔膜を境に、頭側に貯まれば胸水、尾側に貯まれば腹水です。
また、骨盤部ではダグラス窩を確認し、腹腔内での最深部を評価します。


FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)の応用

胸水・腹水の評価において、救急医学で用いられる「FAST法」の考え方も参考になります。
これは、短時間で心窩部・両側肋間・恥骨上部を走査し、液体貯留の有無を確認する方法です。
在宅医療の現場でも、「まずは水があるか・ないか」を迅速に判断する際に応用できます。


まとめ

胸腔・腹腔のエコー評価は、在宅でも可能な非侵襲的でリアルタイムな観察手法です。
液体がどこに、どのくらい、どんな性状で存在するかを把握することで、
・呼吸苦や腹部膨満の原因特定
・ドレナージや利尿薬調整の判断
など、日常診療の質を大きく高めることができます。


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