在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する50~胸水・腹水をエコーで観察する ― 横隔膜を中心にしたアプローチ法

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1. 横隔膜を境に「胸水」と「腹水」を見分ける

胸水や腹水を観察する際、まず注目すべきは横隔膜です。
横隔膜は、胸腔と腹腔を分ける“仕切り”のような構造であり、液体がどちら側にあるかで病態の判断が変わります。

エコーでは、肋間から両側を走査します。

  • 右側:肝臓(右葉)を目標に走査

  • 左側脾臓を目標に走査

横隔膜の頭側(上側)に液体が見えれば胸水尾側(下側)であれば腹水と判断します。
右肋間走査では、少し尾側にずらして**モリソン窩(肝と右腎の間)**の観察も行います。

さらに、下腹部の正中縦断走査でダグラス窩を観察。
上腹部正中では肝左葉周囲と心嚢液の有無も確認します。
最後に、左右の傍結腸溝もチェックしておくと、腹水の分布をより正確に把握できます。


2. 短時間で液体貯留を確認する「FAST」法

エコーによる胸水・腹水の検索では、**FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)**という考え方が参考になります。

もともとは外傷初療で体幹部出血を迅速に評価するための方法ですが、在宅や一般診療でも「短時間で液体の有無を確認する」目的で応用可能です。

FASTでは、以下の4か所を中心に無エコー域(液体)の有無をテンポよく観察します:

検索部位 主な観察内容
心窩部 心嚢液の有無
右肋間 胸水、右横隔膜下、モリソン窩の液体貯留
左肋間 胸水、左横隔膜下の液体貯留
恥骨上部 ダグラス窩の腹水貯留の有無

FASTは「無エコー域があるかどうか」をテンポよく確認することが重要です。
特に外傷など急性期では、1か所でもFAST陽性(液体貯留あり)であれば緊急対応が必要となります。
在宅医療の現場では、短時間で状態変化を把握できるシンプルな評価法としても有用です。


3. ティッシュハーモニックイメージで描出をクリアに

エコー画像の品質を左右するのが、**ティッシュハーモニックイメージ(Tissue Harmonic Imaging)**機能です。

通常、超音波は体内を通る際にわずかな歪み(高調波成分)を生じます。
この高調波のみを画像化することで、周囲組織からのノイズ(アーチファクト)を抑え、液体がより鮮明に黒く抜けて見えるようになります。

かつては高性能機種だけの機能でしたが、現在はノート型や携帯型エコーにも搭載されており、在宅医療やベッドサイド診療でも高画質な観察が可能となっています。


4. 実践のポイントまとめ

  • まずは横隔膜を中心に観察し、液体が上か下かで胸水・腹水を見分ける

  • モリソン窩、ダグラス窩、傍結腸溝は腹水の好発部位

  • FAST法を用いると、短時間で液体貯留の有無を確認できる

  • ティッシュハーモニック機能でノイズを減らし、より明瞭な描出を得る

これらを意識して観察すれば、胸水・腹水の評価はより効率的かつ正確になります。
在宅の現場でも、「息苦しい」「お腹が張る」といった症状を見たときに、エコーを活用してその場で判断できるのは大きな強みです。


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