在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療における認知症について56~抗精神病薬 ― 用法・用量と中止のタイミング

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〜「できるだけ少なく・できるだけ短く」が原則〜

抗精神病薬は、認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して確実な効果がある一方、
死亡率を含む重大な副作用リスクがある薬です。
そのため、「できるだけ少ない量を、できるだけ短期間だけ使う」ことが大原則です。


1. 用法・用量 ― 少量・短期使用を徹底する

抗精神病薬を処方する際は、最小限の用量から始め、必要があれば段階的に調整します。

🔹 リスペリドン(欧州での認可基準・日本では未承認)

欧州では、アルツハイマー認知症に伴う持続的な攻撃性に対してのみ、短期間の使用が認められています。

  • 開始:0.25mgを1日2回

  • 必要に応じて2日に1回の頻度で0.25mgずつ増量

  • 通常至適用量:0.5mg 1日2回

  • 最大でも:1mg 1日2回

  • 使用期間は6週間以内に限定

日本ではBPSDに対して正式に承認されていません。
このため、「リスペリドンを推奨する」という意味ではなく、あくまで**“短期・少量”の目安として参考にする**という位置づけです。

なお、クエチアピンとオランザピンは日本国内において糖尿病に禁忌とされていますので注意が必要です。


2. 「減薬・中止を常に意識する」ことが世界的推奨

多くのガイドラインで共通しているのは、

「症状が落ち着いたら、できるだけ早く減量・中止を検討せよ」
という原則です。

出典 推奨内容
厚生労働省 BPSD対応ガイドライン 常に減薬・中止が可能か検討すること
日本神経学会『認知症疾患診療ガイドライン2017』 3か月以上症状が安定している場合は注意深く減薬を試みる
米国精神医学会(APA, 2016) 開始後4か月以内に漸減中止を試みること

これらの背景には、抗精神病薬長期使用による死亡率上昇という重大な安全性の懸念があります。


3. 「やめても変わらない」ことが多いが、例外もある

抗精神病薬を3か月以上使用した患者を対象に、
「継続群」と「中止群」を比較した複数の無作為化比較試験(RCT)のレビューでは、
継続しても中止してもBPSDの改善度に大きな差はなかったと報告されています。

ただし、例外があります。
抗精神病薬明らかに興奮や攻撃性が改善した症例では、中止によって症状が再発するリスクが高まります。

そのため、

といった場合は、死亡率上昇というリスクを理解したうえで、家族の同意のもと長期継続する選択肢もあり得ます。
それでも、一度は減薬・中止を試みることが推奨されます。


4. 中止の際に注意すべきこと

抗精神病薬ドーパミンD₂受容体をブロックすることで幻覚や妄想を抑えます。
しかし、長期間の使用により身体が反応的に**D₂受容体を増やす(アップレギュレーション)**ことが知られています。

そのため、

  • 長期使用後に急に中止すると、リバウンド的に幻覚・妄想・興奮が再発する

  • これは「病気の悪化」ではなく「薬の離脱反応」である可能性もある

という点を理解する必要があります。

したがって、

抗精神病薬の中止は“ゆっくり・段階的に”行うのが安全です。

漸減中止のスケジュールは個々の症例に合わせて慎重に設定し、家族や介護スタッフとも密に情報共有することが大切です。


まとめ

  • 抗精神病薬は「少量・短期」を徹底する

  • 症状安定後は減薬・中止を常に検討

  • 継続が必要な場合も、家族とリスクを共有したうえで慎重に

  • 中止時は急がず、漸減で

  • 使用目的は「安心と安全の両立」であり、漫然と続けない


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