在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する⑥~【診療ガイドラインを“使いこなす”ということ】

 


――EBMとリハ栄養の実践から考える、臨床判断のあり方――

リハ栄養診療ガイドライン2018が発表されて以来、
臨床現場では「どの患者に、どこまで介入すべきか?」という判断場面が増えています。

しかし、ガイドラインそのまま自動的に当てはめれば良い“マニュアル”ではありません。
重要なのは、「目の前の患者にどう適応するか」を考える医療者の姿勢です。

図にあるように、EBMの臨床決定には次の3つが重なり合います。

https://www.mdv.co.jp/ebm/ebm.assets/images/ebm_fig_2.png
https://spell.umin.jp/HaynesEBMCircles.png
  • 研究エビデンス

  • 患者の価値観・行動

  • 医療者のスキル・経験

そしてこれらを包むのが、臨床の状態や環境です。

ガイドラインを活かす鍵は、この“重なり合い”にあります。


◆ 1. ガイドラインをそのまま当てはめてはいけない理由

信頼できる診療ガイドラインであっても、
すべての患者に一律に適用できるわけではありません。

まず必要なのは、

  • 併存疾患

  • 社会的背景

  • 栄養状態

  • 家族の支援体制

  • リハの受けられる環境
    など、患者個人の状況を丁寧に把握すること。

そのうえでガイドラインに照らし、

  • この患者にとってエビデンスは妥当か

  • ガイドラインの推奨が“利益>不利益”となるか

  • 患者本人は何を望んでいるか

  • 医療者が提供可能なケアと現場の制約は何か

を総合的に判断します。

「推奨に合うから行う」「違うから行わない」ではなく、
“適用の仕方”を考えることがEBMの本質です。

また迷う場面では、
カンファレンスで共有し、多職種・同僚の意見を取り入れることも重要です。


◆ 2. 期待した結果が得られない場合の振り返り

ガイドラインに沿って介入したのに、
思うような効果が得られない… ということは臨床ではしばしば起こります。

その時こそ、EBMStep1〜4 を振り返るチャンスです。

  • Step1:問題設定は正しかったか

  • Step2:参照したエビデンスは妥当だったか

  • Step3:解釈に偏りはなかったか

  • Step4:患者個別の状況に合った適用ができたか

ここを丁寧に検証することで、
自分の臨床判断のどこを補うべきかが見えるようになります。

特に重要なのは、
ガイドラインからどこを、どの理由でアレンジしたのか」を言語化すること。

これが次の患者対応に活き、
医療チームとしての知識が蓄積される基盤となります。


◆ 3. ガイドラインは“未来の患者”のために進化する

ガイドラインは一度作って終わりではありません。
リハ栄養診療ガイドライン2018も、現状は

という課題があります。

そのため、

  • 臨床現場での実践経験

  • 良質な研究の蓄積

  • 多職種からのフィードバック

が次回改訂(5年後)での質向上に不可欠です。

つまり、
現場でのEBM実践の積み重ねこそが、未来の患者を救う材料になる
ということです。


◆ 4. まとめ:ガイドラインを“使いこなす医療者”とは?

ガイドラインは優れたツールですが、
それを活かすのは 医療者の思考と対話です。

  • 患者の価値観を聞く

  • 家族と話し合う

  • 多職種と協働する

  • 医療者自身の判断理由を説明する

  • 期待通りでなくても改善点を見つける

この積み重ねこそが、
EBMを実践するということ。

そしてリハ栄養の質を高める道そのものです。

リハ栄養診療ガイドラインは、
より良い臨床を作るために「医療者と患者が共に使う地図」。
その地図をどう読むかは、現場の私たち一人ひとりに委ねられています。

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