在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する⑧~【リハ栄養診療ガイドライン2018】

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成人がん・急性疾患の最新エビデンスと、EBMに基づくガイドラインの読み解き方

リハビリテーションと栄養療法は、どちらも患者さんのQOL(生活の質)や回復過程に強く影響します。
「リハ栄養診療ガイドライン2018」では、主要4疾患(脳血管疾患/大腿骨近位部骨折/成人がん/急性疾患)について、
患者個別の状態に応じた“強化型栄養療法”の有効性 が検討されています。

この記事では、特に質問の多い 成人がん・急性疾患領域 のポイントと、
ガイドラインを読み解くための EBM(Evidence Based Medicine)の考え⽅ までを分かりやすくまとめました。


▼【成人がん】リハ+栄養指導のプログラムは行うべきか?

CQ

不応性悪液質を除く成人がん患者に、リハビリと栄養指導を組み合わせたプログラムを行うべきか?

● 推奨(一定の推奨はしない/エビデンス非常に低い)

補助化学療法・放射線治療を受ける成人がん患者において、
現時点では リハ+栄養指導プログラムを一律に推奨できるだけのエビデンスは不足 しています。

ただし――

  • 患者・家族の意向

  • 病状の進行度

  • ADL低下の程度

  • 栄養状態(低栄養/悪液質の有無)

などを総合的に見て、個別判断で介入を行うことが望ましい とされています。

★ ポイント

  • がん患者では研究の脱落率が高く、運動療法が必ずしもQOL改善につながらない例もある。

  • しかし、患者・家族が栄養介入・リハビリを強く希望するケースも多く、
    エビデンスだけでは切り捨てない「価値観の尊重」ガイドラインでも重視されています。

がん領域では“個別化”が最重要。
在宅医療・外来でも「何を優先したいか」を丁寧に確認し、慎重に可否判断を行うことが実臨床では必須です。


▼【急性疾患:acute illness】

強化型栄養サポートは行うべきか?

CQ

リハを実施している急性疾患患者に、強化型栄養サポートを行うべきか?

● 推奨(弱い推奨・エビデンス非常に低い)

急性疾患(感染症・手術後・急性増悪など)では、
代謝ストレスと栄養需要の増加 が同時に進むため、栄養不足が急速に進行します。

そのため、

  • リハビリに加え、

  • 個別アセスメントに基づく栄養管理(ONS/経腸/静脈栄養の併用)

を推奨しています。

ただし、
・自主的リハビリ
・強化型リハプログラム
の併用が望ましいとされ、栄養だけ切り離した介入は効果が弱い と考えられます。

➡ 急性期では “早期からリハ×栄養の一体運用” が鍵。


▼【EBM実践】ガイドラインはどう作られる?

ー「エビデンス=研究結果」ではない、総合判断のプロセスー

診療ガイドラインは、EBMの5ステップに沿って作成されます。

EBMの5 step

  1. 疑問・問題の定式化

  2. 情報収集(文献検索)

  3. 批判的吟味(研究の質を評価)

  4. 患者への適用(臨床判断)

  5. 振り返り・改善

ガイドラインはこのうち Step 2・3 を代行する役割 を持ち、
臨床現場(Step 4)をサポートします。

ガイドライン作成の流れ

  • CQ(臨床上の問い)を設定する

  • 国内外の論文を ステマティックレビュー(SR) で収集

  • エビデンスの確実性を評価(GRADE)

  • 患者・家族の価値観、費用、医療者の経験も加味

  • 推奨文を作成

重要なのは、
エビデンスの強弱だけで推奨は決まらない という点です。

★ 成人がんの例

研究では「脱落率が高い」「QOL低下の可能性がある」ため、
当初は「リハ栄養介入は推奨しない」案が有力でした。

しかし、パネル会議で

  • 患者家族の意向

  • 治療を頑張りたいという価値観

  • 在宅・病院での実臨床の声
    などが重視され、推奨文が修正されました。

ガイドラインは“患者中心の医療”の価値観も反映して作られる。


▼【まとめ】

リハ栄養診療ガイドライン2018が示すメッセージは明確です。

  • 栄養とリハは“セット”で考えるべき

  • がんや急性疾患では、画一的な答えではなく「個別判断」が重要

  • ガイドラインは“万能の答え”ではなく、臨床判断の支援ツール

  • 患者・家族の意向を尊重するEBMが、今後ますます求められる

在宅医療・リハ栄養の現場でも、
栄養状態の把握、早期介入、多職種連携 は欠かせません。


▼ 関連リンク

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