在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する⑪~【疾病構造の変化とサルコペニア嚥下障害への新しい対応】

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日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進み、医療の中心は「治す医療」から “併存疾患を抱える高齢者の生活を支える医療” へと変化しています。
こうした疾病構造の変化の中で、摂食嚥下障害も従来のアプローチだけでは十分に改善できないケースが増えてきました。

特に、高齢者では下記の要因が複雑に絡み合い、嚥下機能が低下しやすくなります。


■ 高齢者の嚥下低下と関係する要因

  • 併存疾患(心疾患、脳疾患、腎不全、感染症など)

  • ポリファーマシー(多剤服用)

  • 認知症による食行動変化

  • 活動量低下

  • 低栄養

  • サルコペニア

これらが重なると、単純な「嚥下訓練」だけでは改善しないケースが多く見られます。


サルコペニアを伴う嚥下障害では“従来型リハだけでは不十分”

従来の摂食嚥下訓練は、構造的・神経学的障害に対しては効果的でした。
しかし近年増えている サルコペニア(筋肉量低下)を背景とした嚥下障害 では、

  • 嚥下筋そのものが萎縮

  • 全身の筋力低下により姿勢保持が困難

  • 呼吸筋力低下により誤嚥リスク増大

  • 食事量低下 → さらなる低栄養 → 筋力低下(悪循環)

というメカニズムが働くため、
嚥下リハだけでは改善しにくい のが現実です。


■ 2018年:4学会合同ポジションペーパーが示した統一見解

サルコペニア嚥下障害の増加を受け、
日本摂食嚥下リハ学会・日本サルコペニア・フレイル学会・日本リハ栄養学会・日本嚥下医学会
の4学会が、2018年に合同でポジションペーパーを発表しました。

その内容のポイントを整理すると次の通りです。


【1】サルコペニアは嚥下障害を引き起こす

サルコペニアにより、

  • 全身の筋肉

  • 嚥下関連筋
    がともに萎縮し、二次性サルコペニア嚥下障害 が発生。

特に、


【2】嚥下リハだけでは改善は難しい

ポジションペーパーでは明確に述べられています:

サルコペニアを伴う摂食嚥下障害は、嚥下リハ単独では改善が難しい。
栄養改善と嚥下リハを同時に行うことが重要である。

つまり、
攻めの栄養療法(栄養介入)+嚥下リハ
を組み合わせて初めて、有効な改善が期待できます。


【3】サルコペニア・低栄養・経口摂取は相互に関連

という 負のスパイラル が成立します。

一方で、

  • 経口摂取を確保

  • 十分な栄養量を確保

  • リハによる筋力維持・改善
    がそろえば、このスパイラルを 正の方向へ反転 させることも可能です。


■ 入院中に発症する“予防できる嚥下障害”

ポジションペーパーでは、重要な示唆も述べられています。

入院中の高齢者におけるサルコペニア嚥下障害は、予防できる可能性がある。

予防のためには、

  • 適切な栄養介入

  • 早期離床・活動量確保

  • サルコペニア・低栄養の早期評価

  • 多職種によるリハ・栄養管理
    が不可欠です。

すなわち、医原性サルコペニアを生まない医療 が求められています。


▼まとめ

  • 高齢者医療ではサルコペニアを背景とした嚥下障害が急増している

  • 4学会合同ポジションペーパーにより、嚥下障害とサルコペニアの関連は明確化

  • 嚥下リハ単独療法は不十分で、栄養介入との組み合わせが必須

  • 入院中の嚥下障害は予防可能な場合がある

  • 攻めの栄養療法は、嚥下機能を守るだけでなく、ADL・QOL改善にも直結する


🔗 関連リンク

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