在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する⑫~【サルコペニア嚥下障害に対する治療】

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― 栄養 × リハ × 多職種連携による「攻めの栄養療法」 ―

サルコペニアを背景とした摂食嚥下障害は、従来の嚥下リハビリだけでは改善が難しいことが知られています。
その理由は、嚥下筋の筋力低下だけでなく、全身の低栄養・筋量低下 が同時に進行しているためです。

そこで重要になるのが、
「攻めの栄養療法(アグレッシブ・ニュートリション)」
を用いた包括的アプローチです。


▼ 1. 低栄養とサルコペニアを改善する ― 攻めの栄養療法の役割

回復期リハ病棟での多施設研究では、
低栄養リスクが高い患者ほど、経口摂取の獲得が困難である と報告されています。

しかし現場では、

  • 低栄養のリスクが十分に認識されていない

  • 認識されていても栄養介入不足
    という問題がしばしば見受けられます。

● 栄養不足が続くと何が起こるか?

  • 全身の筋肉量が減少

  • 嚥下筋も萎縮

  • 嚥下機能低下 → 食べられない → さらなる低栄養

  • ADL・QOL低下

この悪循環を断ち切るには、
筋肉と栄養状態を同時に改善する“攻めの栄養療法”が不可欠 です。


▼ 攻めの栄養療法の有効性:症例報告(3例)の共通点

サルコペニア嚥下障害の改善を示した3つのケースレポートでは、
次の共通点が明らかになっています:

● ① 理想体重×32〜35 kcal/kg のエネルギー補給

→ 約10kgの体重増加を達成
嚥下機能が改善

● ② 多職種チームによる集中的介入

による 多角的アセスメントと計画的な栄養介入 が行われていた。

● ③ リハ栄養サイクルの活用

  • ICFに基づく評価

  • 栄養状態・筋量の評価

  • 目標設定

  • 栄養ケアとリハの同時実施

“評価 → 目標 → 介入 → 再評価” のリハ栄養プロセスが治療成功の鍵となる。


▼ 2. 経口摂取の早期開始は嚥下機能を守る“治療そのもの”

従来の嚥下障害への対応は、嚥下訓練(ST)を中心に行われてきました。
脳卒中などによる嚥下障害では、時間経過とリハビリにより改善することも多かったため、
栄養管理の重要性が過小評価されがち でした。

しかし――
サルコペニア嚥下障害は「食べないこと」が病状を悪化させる根本原因となります。

● 攻めの栄養療法では「経口摂取をできる限り続ける」が大前提

  • 嚥下機能評価に基づいた食形態設定

  • 食事に要する時間・嚥下筋疲労の考慮

  • 必要量を確保するための食事調整

  • 少量であっても経口摂取は嚥下機能の維持に重要

● 経口のみで必要栄養量が確保できない場合

→ 経管栄養・静脈栄養を併用
→ ただし 経口摂取の維持を最優先 する

栄養不足を放置するとサルコペニアが進行し、嚥下機能はさらに低下。
逆に栄養量が確保できれば、嚥下筋を含む筋肉量が改善し、嚥下機能も向上します。


▼ 3. “攻めの栄養療法” こそが、経口摂取継続の鍵

攻めの栄養療法は、単にカロリーを増やすのではなく、

  • 十分な栄養量の確保

  • 多職種チームによる介入

  • リハとの併用

  • 個別目標設定
    に基づく体系的アプローチです。

「食べる力」「飲み込む力」「生活する力」を維持・改善するための、治療の中心」
と言えます。


🔗 関連リンク

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