
侵襲とは何か
侵襲とは、
重症感染症・大手術・多発外傷・熱傷など、
生体を傷害し、生体恒常性を大きく乱す刺激を指します。
侵襲が加わると、生体内では以下が生じます。
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内因性エネルギー供給(endogenous energy supply)の増大
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ストレスホルモン・炎症性サイトカインの大量分泌
一方、栄養療法は**外因性エネルギー供給(exogenous energy supply)**に相当します。
生体のエネルギー需要は、
👉 内因性+外因性エネルギーの合計で満たされる
という点が重要です。
「必要量=外因性投与」は危険
侵襲下で、
エネルギー必要量と同量の外因性エネルギーを投与すると、
実質的には overfeeding(過剰栄養) となる可能性があります。
その結果、最も問題となる合併症が 高血糖 です。
侵襲時に高血糖が起こる理由
侵襲時には、
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肝臓・骨格筋のグリコーゲンが消費される
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肝グリコーゲンは 12~24時間程度で枯渇
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その後は
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乳酸
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飢餓時と異なる重要な点は、
が阻害され、高血糖をきたしやすいことです。
高血糖がもたらすリスク
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好中球機能低下
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細胞内殺菌能低下
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免疫能低下
これにより 感染症リスクが増大するため、
👉 目標血糖値は 180 mg/dL 以下
に管理することが推奨されます。
侵襲時の栄養投与の目安
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エネルギー必要量
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間接熱量計
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または 25~30 kcal/kg/day(簡易式)
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たんぱく質投与量
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1.2~2.0 g/kg/day(実測体重)
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腎機能を評価しながら調整
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ただし、重要なのは
👉 侵襲による低栄養は「原因治療」が最優先
という点です。
侵襲の根源(感染・出血・炎症・外科的侵襲など)が
適切にコントロールされなければ、
栄養療法のみで低栄養を改善することは困難です。
そのため、
👉 高度侵襲下における「攻めの栄養療法」は原則として禁忌
と考えます。
悪液質|「攻めてはいけない」代表的病態
悪液質とは
**悪液質(cachexia)**は、
通常の栄養療法では改善が困難で、
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著明な骨格筋量減少
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機能障害の進行
を伴う、慢性炎症を背景とした代謝異常症候群です。
主な原因疾患には以下があります。
がん悪液質のステージと栄養療法
がん悪液質は以下の3段階に分類されます。
① 前悪液質(Pre-cachexia)
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慢性炎症
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軽度の体重減少
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食欲不振
👉 早期介入が最も重要なステージ
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エネルギー:25~30 kcal/kg/day
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たんぱく質:1.0~1.5 g/kg/day
定期的な評価を行いながら、
攻めの栄養療法も条件付きで可能です。
② 悪液質(Cachexia)
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明らかな体重減少
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筋肉量減少
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身体機能低下
病態に応じて、
症状緩和を意識した栄養介入が中心となります。
③ 不応性悪液質(Refractory cachexia)
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急速に進行するがん
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抗がん治療への抵抗性
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余命が限られた状態
この段階では、
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経管栄養 → 下痢・腹部膨満・嘔吐
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静脈栄養 → 浮腫・腹水・胸水・高血糖
などにより、QOLを著しく低下させる可能性があります。
👉 不応性悪液質では、栄養状態改善を目的とした「攻めの栄養療法の適応はない」
と考えられます。
まとめ|侵襲・悪液質は「攻めない勇気」が必要
「栄養を入れること=善」ではない。
病態を見極め、「攻めない判断」も栄養療法の重要な一部です。