
慢性心不全|「増やす栄養」と「抑える栄養」のバランスが鍵
慢性心不全とは
心不全は、
「心臓に器質的・機能的異常が生じ、心ポンプ機能の代償機構が破綻した結果、
呼吸困難・倦怠感・浮腫が出現し、運動耐容能が低下する臨床症候群」
と定義されます。
慢性心不全における栄養管理の柱は、
-
体液バランス(ナトリウム管理)
-
適正なエネルギー・たんぱく質量の確保
です。
慢性心不全における栄養量の基本
エネルギー・たんぱく質量
-
エネルギー:30 kcal/kg/day 以上
-
たんぱく質:1.2~1.5 g/kg/day
が推奨されています。
腎機能障害を伴う場合の注意点
ただし、
-
eGFR < 45 mL/分/1.73m²(CKD G3b 以上)
を認める場合は、
-
たんぱく質:0.6~0.8 g/kg/day
へ制限する必要があります。
👉 腎機能を無視した高たんぱく設定は禁忌
であり、「攻めの栄養療法」の落とし穴となります。
ナトリウム(塩分)管理の考え方
ナトリウムは細胞外液の浸透圧維持に関与するため、
長期的な過剰摂取は血管内水分量を増加させ、うっ血を助長します。
塩分摂取基準
-
男性:7.5 g/日未満
-
女性:6.5 g/日未満
-
高血圧・CKD 合併例:男女とも 6.0 g/日未満
「減塩しすぎ」にも注意
一方で、
-
極端な減塩
-
味気ない食事
は 食欲低下 → 低栄養 を招くリスクがあります。
👉 心不全では
「減塩」と「食べられること」の両立
が非常に重要です。
心不全における「攻めの栄養療法」の注意点
心不全では、
👉 「攻めすぎ」も「守りすぎ」も失敗につながる
という点が特徴です。
肥満症|「攻めの栄養療法」は原則適応外
肥満症の定義
肥満は、エネルギー摂取と消費のアンバランスにより
脂肪が過剰に蓄積した状態です。
肥満症は、
など、多くの疾患を合併します。
肥満症における栄養療法の基本方針
減量目標
-
肥満症:現体重の 3%以上
-
高度肥満症:5~10%以上
エネルギー設定
-
肥満症:
25 kcal/kg(標準体重)/day -
高度肥満症:
20~25 kcal/kg(標準体重)/day 以下
👉 運動療法の併用が必須
たんぱく質量
-
1.0 g/kg(標準体重)/day
-
エネルギー比:20%以下
サルコペニア肥満とたんぱく質
高齢者のサルコペニア肥満では、
-
低カロリー × 低たんぱく食(0.8 g/kg)
→ 筋肉量は減少 -
低カロリー × 高たんぱく食(1.2 g/kg)
→ 筋肉量は増加
という報告があります。
👉 肥満症であっても、
たんぱく質を削りすぎることは禁忌です。
肥満症における「攻めの栄養療法」の禁忌
-
26 kcal/kg(標準体重)/day 以上のエネルギー設定
-
-
0.8 g/kg(標準体重)/day 未満
-
これらは、
-
脂肪増加
-
代謝異常の悪化
を招くため、避けるべきです。
まとめ|心不全と肥満症は「正反対の判断」が必要
同じ「栄養療法」でも、疾患により正解は正反対です。
病態を見極めたうえで、「攻める」「攻めない」を判断することが重要です。