在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する30~各種疾患・合併症における禁忌事項

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脂質異常症

― エネルギーを「増やすほど悪化する」代表的病態 ―

脂質異常症とは

血中のリポたんぱくは、脂質を全身へ運搬する役割を担っています。
通常、脂質代謝ホメオスタシス(恒常性)により厳密に制御されていますが、
何らかの要因により血中脂質レベルが逸脱した状態を脂質異常症
と呼びます。

脂質異常症は、動脈硬化性疾患の主要な危険因子です。


脂質異常症の主な指標(空腹時採血)

主な評価項目

これらはいずれも、冠動脈疾患リスクと密接に関連します。


脂質異常症における基本的な栄養療法

脂質異常症の栄養療法の基本は、
👉 「攻める」ことではなく「抑える」ことです。

● エネルギー設定

  • 過剰なエネルギー摂取を避ける

● 栄養素バランスの目安

  • 脂質エネルギー比:20~25%

  • 糖質エネルギー比:50~60%

● 脂質の質の調整


■ 各脂質指標が示す臨床的意味

● LDLコレステロール(LDL-C)

  • 酸化により変性したLDLが血管壁に沈着

  • 粥状動脈硬化を発症・進展

HDLコレステロール(HDL-C)

● トリグリセライド(TG)

  • 高TG血症は急性膵炎のリスク因子

  • 糖質・アルコール摂取の影響を強く受ける

👉 高TG血症では
糖質制限・アルコール制限が必須


■ 攻めの栄養療法が禁忌となる理由

脂質異常症の患者に対して、

👉 過剰なエネルギー摂取そのものがリスクとなります。

特に避けるべき栄養構成

  • 炭水化物エネルギー比が60%を超える食事

  • 肉類など動物性たんぱく質飽和脂肪酸主体の食事

  • 高脂質・高糖質の「エネルギー過多」な栄養設計

これらは、

を助長し、攻めの栄養療法が“害”に転じる典型例です。


■ 結論

脂質異常症に「攻めの栄養療法」は原則不適

  • 脂質異常症では
    👉 エネルギー過剰=病態悪化

  • 栄養介入の目的は
    👉 代謝是正と動脈硬化抑制

  • 「増やす」より
    👉 「質とバランス」を最優先


■ 在宅医療・高齢者医療での視点

  • サルコペニアがあっても
    脂質異常症を無視した栄養強化は禁忌

  • 栄養 × 運動 × 薬物療法のバランスが重要

  • 「筋肉を増やすつもりで、血管を傷めない」判断力が求められる


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