
● 慢性心不全
―「攻めたいが、攻めすぎてはいけない」代表的病態 ―
■ 慢性心不全とは
心不全とは、
「心臓の器質的・機能的異常により、
心ポンプ機能の代償機転が破綻し、
呼吸困難・倦怠感・浮腫を生じ、
運動耐容能が低下する臨床症候群」
と定義されます。
慢性心不全では、
循環・体液・代謝・栄養状態が密接に絡み合います。
■ 慢性心不全における栄養管理の基本
慢性心不全の栄養管理で重要なのは、次の2点です。
-
適正なエネルギー量の確保
-
体液バランスに関わるナトリウム(塩分)管理
■ 推奨されるエネルギー・たんぱく質量
● エネルギー量
サルコペニア・フレイルを合併しやすいため、
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30 kcal/kg/day 以上
が目安とされます。
● たんぱく質量
-
1.2~1.5 g/kg/day
が推奨されます。
👉 ここだけ見ると「攻めの栄養療法」が必要に見えますが、
重要な落とし穴があります。
■ 腎機能障害を伴う場合の禁忌
慢性心不全では、腎機能障害を合併するケースが非常に多いのが現実です。
● eGFR < 45 mL/分/1.73m²
(CKD G3b 以上)を認める場合
-
たんぱく質:
👉 0.6~0.8 g/kg/day へ制限
👉 腎機能を無視した高たんぱく設定は禁忌
👉 心不全悪化・尿毒症リスクを高めます。
■ ナトリウム(塩分)管理の重要性
ナトリウムは、細胞外液の浸透圧維持に深く関与します。
● 長期的な過剰摂取により
を引き起こします。
● 食塩摂取基準
-
男性:7.5 g/日 未満
-
女性:6.5 g/日 未満
さらに、
-
高血圧・CKDの重症化予防目的では
👉 男女とも 6.0 g/日 未満
が推奨されています。
■ 攻めの栄養療法で注意すべきポイント
● るい痩・サルコペニアを伴う場合
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エネルギー不足は明確な悪化因子
-
エネルギー量の確保は重要
● しかし、以下は禁忌
-
腎機能障害を無視した高たんぱく設定
-
塩分増加を伴う「量だけ増やす食事」
特に、
-
エネルギー確保を目的に
👉 副食量を増やす
👉 加工食品を多用する
と、知らないうちに塩分過剰となる危険があります。
■ 「減塩しすぎ」もまた問題
一方で、
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極端な減塩
-
味気なさによる食欲低下
は、
-
摂取エネルギー低下
-
栄養不良
-
フレイル進行
につながります。
👉 減塩と栄養確保のバランスが極めて重要です。
■ 結論
慢性心不全における攻めの栄養療法の考え方
-
エネルギー:
👉 不足は禁忌 -
たんぱく質:
👉 腎機能を無視した高負荷は禁忌 -
塩分:
👉 過剰も極端な制限も禁忌
慢性心不全では、
「攻める部分」と「守る部分」を同時に判断する栄養管理
が求められます。