
―「攻めの栄養管理」を成立させるための考え方 ―
栄養投与量を考える際、**活動係数(AF)**と並んで重要となるのが
ストレス係数(Stress Factor:SF) と エネルギー蓄積量 です。
ストレス係数(SF)とは何か
ストレス係数(SF)とは、
疾患や外傷、手術侵襲などによって生じる代謝亢進の程度を反映させるための係数です。
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感染
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炎症
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外傷
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手術侵襲
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治療に伴う代謝変化
これらにより、安静時でもエネルギー消費量は増大します。
SFは一律に決められるものではなく、
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栄養障害の程度
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病態の重症度
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治療内容と侵襲度
を総合的に評価したうえで、患者ごとに設定する必要があります。
ストレス係数(SF)の目安
代表的な文献をもとにした、SFの目安は以下の通りです。
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軽度ストレス(安定期・軽度感染など)
→ 1.0~1.1 -
中等度ストレス(肺炎、腹膜炎など)
→ 1.2~1.4 -
高度ストレス(多発外傷、重症感染、術後早期など)
→ 1.5以上
※ 侵襲の程度が強いほど、SFは高く設定されます。
一方で、終末期や高度炎症状態では、
計算上エネルギー消費量が高く出ても、
実際には十分に利用されないこともあり、慎重な判断が必要です。
TEEは「体重維持量」にすぎない
推定式で算出した 総エネルギー消費量(TEE) は、
原則として、
「現在の体重を維持するために必要なエネルギー量」
を意味します。
したがって、
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低栄養患者の体重を増やしたい
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筋肉量を増加させたい
という目的がある場合には、
TEEに加えて「エネルギー蓄積量」を付加する必要があります。
エネルギー蓄積量の考え方
一般に、
体重1kg増加に必要なエネルギー貯蔵量は約7,000kcal
とされています。
これを用いて、以下の式で
1日あたりのエネルギー蓄積量を算出します。
具体例
1か月で体重を2kg増加させたい場合
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7,000 × 2 ÷ 30
→ 約470kcal/日
この 470kcal/日 を
算出したTEEに上乗せすることで、
**「攻めの栄養管理」**を検討します。
エネルギー蓄積量を付加する際の重要な注意点
① 運動(リハビリ)なしでは筋肉は増えない
エネルギー蓄積量を付加した場合、
必ずレジスタンストレーニングなどの運動を併用する必要があります。
運動刺激がなければ、
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脂肪だけが増える
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サルコペニアは改善しない
という結果になりかねません。
② 高齢者では「計算通り」にいかない
高齢者では、
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体重1kg増加に必要なエネルギー量が
8,800~22,600kcal に及ぶ
という報告もあり、
若年者と同じ計算式がそのまま当てはまらないことがあります。
そのため、
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体重
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筋肉量
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ADL
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易疲労感
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浮腫
などを慎重に観察する必要があります。
推定式は「仮説」にすぎない
TEEも、エネルギー蓄積量も、
**あくまで推定式に基づく「仮説」**です。
必ずしも、
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計算通りに体重が増える
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期待通りに筋肉が増える
とは限りません。
だからこそ、
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プランを立てる
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実施する
-
モニタリングする
-
提供量を調整する
という
仮説構築 → 検証 → 判断 → 再構築
のサイクルを回し続けることが不可欠です。
これは、これまで述べてきた
SMARTなゴール設定・仮説思考・攻めの栄養療法
すべてと連動する考え方です。