在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する38~必要たんぱく質量の考え方

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― 攻めの栄養療法を支える“もう一つの柱” ―

エネルギー量と並んで重要なのが、たんぱく質投与量の設定です。
たんぱく質は、筋肉量の維持・増加、免疫機能、創傷治癒などに直結するため、
「足りていればよい」では不十分な栄養素です。


高齢者における必要たんぱく質量の目安

日本人の食事摂取基準(2020年版)

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、
フレイル・サルコペニア予防を目的とした場合、

  • 高齢者(65歳以上)では
    少なくとも 1.0 g/kg(現体重)/日以上

たんぱく質摂取が望ましいとされています。


PROT-AGE研究グループの提言

PROT-AGE研究グループのポジションペーパーでは、
活動量や病態に応じて、より高い摂取量が推奨されています。

  • 活動量の多い高齢者
    1.2 g/kg(現体重)/日以上

  • 著しい低栄養状態の高齢者
    最大 2.0 g/kg(現体重)/日以上
    が必要となる場合もあります。


攻めの栄養療法におけるたんぱく質

整理すると、

  • 通常の栄養療法
    1.0 g/kg(現体重)/日以上

  • 攻めの栄養療法
    1.2~2.0 g/kg(現体重)/日

が一つの目安となります。

特に、

  • 筋肉量を増やしたい

  • ADL改善を目指したい

  • リハビリ負荷が高い

といった場合には、
エネルギーだけでなく、たんぱく質量を明確に意識する必要があります。


低栄養を見たら、まず「原因」を考える

低栄養を認めた場合、
最初に行うべきことは 摂取量を増やすことではなく、原因の整理です。

低栄養の原因は、以下の4つに大別されます。

① 慢性疾患+炎症を伴う低栄養

👉 炎症による異化亢進が背景にある


② 急性疾患・外傷による高度炎症性低栄養

👉 ストレス係数(SF)・たんぱく質需要がともに高い


③ 炎症が乏しい慢性疾患による低栄養

  • 神経疾患

  • 加齢に伴う活動量低下 など

👉 摂取不足・活動低下が主因


④ 飢餓による低栄養

  • 食事量低下

  • 経済的・社会的要因 など

👉 エネルギー・たんぱく質ともに不足

原因により、エネルギー・たんぱく質の設定や介入方法は大きく異なります。


必要エネルギー量算出の基本式(再確認)

必要エネルギー量は、以下の考え方で算出します。

 
必要エネルギー量 = 基礎代謝量(BEE) × ストレス係数(SF) × 活動係数(AF) ± エネルギー付加/削減量

BEE算出(Harris–Benedict式)

男性

 
66.5 + 13.8 × 体重(kg) + 5.0 × 身長(cm) − 6.8 × 年齢

女性

 
665.1 + 9.6 × 体重(kg) + 1.8 × 身長(cm) − 4.7 × 年齢

体重変化を目指す場合の考え方

  • 体重増加を目指す場合

     
    TEE +(目標増加体重(kg)× 7,000 kcal ÷ 目標日数)
  • 体重減量を目指す場合

     
    TEE −(目標減少体重(kg)× 7,000 kcal ÷ 目標日数)

たんぱく質も「仮説」で設定する

たんぱく質投与量も、
計算式で決めて終わりではありません。

  • 体重

  • 筋肉量

  • 浮腫

  • 腎機能

  • 疲労

  • リハビリ耐性

などを必ずモニタリングし、

仮説 → 実施 → 評価 → 修正

のサイクルを回し続けることが重要です。

これは、これまで述べてきた
SMARTなゴール設定・仮説思考・攻めの栄養療法
すべてと一貫した考え方です。

 
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