在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する44~消化管の状態と選択できる経腸栄養剤の種類

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―「どこまで消化・吸収できるか」で考える―

経腸栄養剤を選択する際に最も有用なのが、消化・吸収機能に応じた「窒素源(たんぱく質の形)」による分類です。
これは「消化管がどこまで働いているか」を評価し、最小の負担で最大の栄養効果を得るための考え方です。


① 成分栄養剤|消化・吸収機能が高度に低下している場合

成分栄養剤は、
窒素源が結晶アミノ酸のみで構成され、化学的に明確な成分からなることが特徴です。

特徴

  • すべての成分が上部消化管で吸収され、残渣がほとんど生じない

  • 消化機能低下・吸収障害のある病態で有用

注意点

  • 浸透圧が高く、浸透圧性下痢を起こしやすい

    • 投与速度の調整が必須

    • 改善しない場合は溶解水量を増やして浸透圧を下げる

  • 脂質含有量が極めて少なく、長期単独使用では必須脂肪酸欠乏に注意

    • 必要に応じて脂肪乳剤の経静脈投与を検討

  • アミノ酸特有のにおい・苦味があり、フレーバーによるマスキングが必要なことが多い

主な適応

  • クローン病急性期・再燃期

  • 重症膵炎(早期経腸栄養)

  • 短腸症候群

  • 吸収不良症候群(膵外分泌不全など)

👉 現在市販されているのは
エレンタールエレンタールP/ヘパンED(すべて医薬品)


② 消化態栄養剤|吸収効率を高めたい場合

消化態栄養剤は、
窒素源として**アミノ酸に加え、ジペプチド・トリペプチド(低分子ペプチド)**を含むことが特徴です。

特徴

  • ペプチドは独自の吸収経路を持ち、アミノ酸より吸収効率が良いとされる

  • 成分栄養剤より浸透圧が低く、下痢を起こしにくい

主な製品

  • ツインラインNF(※医薬品)

  • ペプチーノ

  • ペプタメンAF

  • ペプタメンスタンダード

  • ハイネイーゲル
    (計10品目・5種類)

ペプチーノは脂質を含まない点が特徴

主な適応

  • 成分栄養と同様の病態

  • 消化管術後障害

  • 放射線腸炎

  • 炎症性腸疾患

  • たんぱくアレルギー など


③ 半消化態栄養剤|「消化管がある程度使える」場合の第一選択

現在、市販されている経腸栄養剤の大多数が半消化態栄養剤です。

特徴

  • 窒素源は主にたんぱく質

  • ほぼすべての栄養素を含有

  • 選択肢が非常に多く、調整しやすい

医薬品として使用できるもの

  • イノラス

  • エネーボ

  • エンシュアH

  • エンシュア・リキッド

  • ラコールNF

  • ラコールNF半固形

(19品目・6種類)

食品扱いの半消化態栄養剤

👉 症例ごとにきめ細かな調整が可能

微量栄養素の設計

  • 多くの製品は1200 kcal/日で日本人の食事摂取基準を充足

  • 近年は
    👉 800~1000 kcal/日でもビタミン・ミネラルが不足しにくい製品
    も増えている


消化管の状態と経腸栄養剤の選び方(まとめ)

消化管の状態 推奨される栄養剤
消化・吸収が著しく低下 成分栄養剤
吸収効率を高めたい 消化態栄養剤
ある程度の消化管機能あり 半消化態栄養剤(第一選択)

※ これは窒素源の違いによる分類であり、
糖質(主にデキストリン)・脂質はいずれも未消化の形で含まれ、
吸収のしやすさの差は主にたんぱく質形態によるものです。


まとめ|「腸を使えるなら、使う」が基本

  • 経腸栄養剤は消化管機能に応じて選ぶ

  • 「重症=すぐ成分栄養」ではなく、段階的評価が重要

  • 適切な選択が、下痢・合併症を防ぎ、栄養治療効果を最大化する

攻めの栄養療法とは、消化管を最大限に活かす栄養戦略です。


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