在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する45~病態別経腸栄養剤とは?

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―「必要な人に、必要な期間だけ」使う栄養戦略―

各種病態に伴う代謝異常の予防・是正を目的に、栄養素の組成を調整したものを
**「病態別経腸栄養剤」**と呼びます。

ただし重要な前提として、
経腸栄養を受ける患者さんの9割以上は、標準的な半消化態栄養剤で安全に耐用可能
とされています。

つまり、
👉 すべての患者に病態別栄養剤が必要なわけではありません。
標準組成で代謝状態や栄養状態が保てない場合に、はじめて使用を検討します。

また名称から医薬品を想起しがちですが、
肝不全用の2製剤を除き、ほとんどが食品である点も重要です。


肝不全用経腸栄養剤

特徴と目的

  • BCAA(分岐鎖アミノ酸)を多く含有

  • Fischer比(BCAA / AAA)を高めた設計

    • 肝硬変では BCAA低下・AAA上昇 が生じる

改善を狙う代謝異常

製品区分

  • 医薬品

    • 成分栄養剤:ヘパンED

    • 半消化態栄養剤:アミノレバンEN

  • 食品:ヘパスⅡ など


糖尿病用経腸栄養剤

目的

  • 摂取後血糖上昇の抑制

設計の工夫

  • 糖質と脂質の割合・質を調整

  • 低GI設計、脂質比率増加など

主な製品(例)

  • グルセルナーREX

  • アイソカル グルコパルTF

  • タピオンα

  • ディムス/ディムスアセプパック

  • 明治インスロー

  • リソース グルコパル
    (計13品目・7種類)

👉 血糖コントロールが標準栄養剤で不十分な場合に検討します。


腎不全用経腸栄養剤

特徴

対象

  • CKD(慢性腎臓病)

    • ステージに応じた栄養管理が必要

注意点

  • 長期使用により、制限された栄養素の欠乏を招く可能性

  • 定期的なモニタリングを行い、
    👉 標準栄養剤との使い分けが重要

急性腎不全では?

  • 原因疾患への対応が最優先

  • 腎不全用栄養剤の必要性は低いことが多い


呼吸不全用経腸栄養剤

特徴

  • 脂質増量・糖質減量

  • 呼吸商(RQ)に配慮した高エネルギー設計

製品

  • プルモケアEx(※現在1種類)

実臨床での考え方

  • 糖尿病用製品の中にも同様の設計思想のものあり

  • 有効性は明確に証明されていないため、
    👉 標準組成の経腸栄養剤で問題ないケースが多い


がん患者用経腸栄養剤

背景

  • がん悪液質に伴う
    がん誘発性体重減少(CIWL) は、

特徴

  • **EPA(エイコサペンタエン酸)**を強化

エビデンス

  • 進行すい臓がん患者において、
    **EPA含有栄養剤(プロシュア)**は
    標準栄養剤と比較し、体重減少抑制効果が報告されています。


まとめ|病態別栄養剤は「切り札」ではなく「選択肢」

  • 原則は標準的な半消化態栄養剤

  • 代謝・栄養状態が維持できない場合に病態別を検討

  • 全員に使うものではない

  • 定期的な評価と標準栄養剤への戻しも重要

病態別経腸栄養剤は、“必要な患者に、必要な期間だけ”使う。
それが、攻めの栄養療法における基本姿勢です。


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