在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

攻めの栄養療法を科学する46~免疫調整経腸栄養剤とは

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―「免疫を上げたい」時に、誰にでも使ってよいわけではない―

**免疫調整経腸栄養剤(Immunonutrition)**とは、
免疫増強効果が期待される栄養素を強化した経腸栄養剤です。

主に以下の栄養素が強化されています。

  • グルタミン

  • アルギニン

  • 核酸

  • n-3系脂肪酸

  • 抗酸化ビタミン など

主な投与対象

  • 消化管の待機手術患者

  • 外傷患者 など

術前に免疫賦活栄養剤を投与することで、
術後感染症の減少などの効果が報告されており、
消化器外科のメジャーな待機手術でルーチンに推奨する報告もあります。


インパクト(Impact)とMEINの違い

🔹 インパク

  • 栄養組成に大きな偏りがある

  • 2週間以上の長期投与は栄養状態改善には不向き

  • 短期・周術期使用が前提

🔹 MEIN

  • 栄養の「質」を調整した設計

  • 栄養インバランスが少なく、長期摂取が可能

⚠️ 重要な注意点

  • ALI(急性肺障害)

  • 重症敗血症などの重症感染症患者

では、有効性が示されないばかりか、
死亡率上昇の報告もあるため、使用は推奨されません。

👉 「免疫を上げたいから使う」ではなく、病態選択が最重要です。


リハビリテーション栄養用の栄養剤

リハビリテーションと栄養管理を同時に行う場面では、
リハ栄養用に設計された栄養食品も有効な選択肢となります。

主な製品例

  • リハデイズ

  • メディミル ロイシンプラス

  • リハたいむゼリー

  • アミノエールゼリー ロイシン40

  • リハサポートmini

  • サルコファイバー など

※ 総合栄養剤の中にも、リハ栄養患者の経管栄養に適した組成の製品があります。


高粘度経管栄養剤という選択肢

固形化経腸栄養剤(ゲル化)

固形化経腸栄養剤とは、
寒天などを用いて液体栄養剤をゲル化し、

「重力に抗して形態を保つ硬さ」

を持たせたものです。

特徴

  • 生理的な形態に近い

  • 以下の改善効果が期待される

    • 嘔吐

    • 栄養剤リーク

    • 下痢

課題

  • 調理に手間と時間がかかる

  • 多数のシリンジや設置スペースが必要

一方で、
寒天は安価・入手容易という利点から、
在宅や施設で採用されることも少なくありません。


半固形状栄養剤(胃瘻用)

特徴

  • 粘度:約5,000~20,000 mPa・s

  • 主に胃瘻用として使用

日本で開発・発展し、
多くの臨床的有用性が報告されています。

2014年には、
👉 ラコールNF配合経腸用半固形剤(医薬品)
も登場しました。


半固形栄養剤に期待される効果

① 胃食道逆流の減少

  • 誤嚥性肺炎の減少

  • 嘔吐の防止

② 栄養剤リークの減少

  • スキントラブルの防止

③ 小腸通過時間の延長

④ 投与時間の短縮

  • 褥瘡悪化の予防

  • リハビリ時間の確保

  • 介護負担の軽減


使用時の注意点(重要)

  • 粘度測定方法はメーカーごとに異なり、統一されたガイドラインは未整備

  • 投与方法に注意

    • 加圧バッグ

    • カテーテルチップシリンジ

    • スクイーザー

    • 手で絞り出す方法

  • 腹部を圧迫しない投与姿勢を徹底する

👉 「半固形だから安全」ではなく、投与方法と姿勢管理が効果と安全性を左右します。


まとめ|特殊栄養剤ほど「使いどころ」が重要

  • 免疫調整栄養剤は周術期・外傷など限定的適応

  • 重症感染症では使用しない判断が重要

  • リハ栄養用・高粘度栄養剤は目的別に使い分ける

  • 半固形栄養剤は誤嚥・下痢・時間短縮の切り札になり得るが、万能ではない

栄養剤は「種類」よりも「適応と使い方」。
それが、攻めの栄養療法の本質です。


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