在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療を科学する15~なかなか治らないおむつかぶれ、実は「IAD(失禁関連皮膚炎)」かもしれません


在宅療養において、ご家族や介護スタッフ様を悩ませるトラブルの一つに「皮膚の赤みやただれ」があります。「いつものおむつかぶれかな?」と市販薬を塗ってもなかなか改善しない場合、それは単なる“かぶれ”ではなく、IAD(失禁関連皮膚炎)という状態かもしれません。

今回は、治療に難渋したある女性のケースを通して、IADの正体とその対策について解説します。

1. 治療に難渋した症例(Case 2)

ある女性の患者様は、偽膜性腸炎や尿路感染症を繰り返し、入退院を重ねておられました。ようやく自宅退院となりましたが、その後、皮膚の状態が急激に悪化してしまったのです。

ご家族や訪問スタッフが、抗菌外用剤や抗真菌外用剤、最新のドレッシング材(被覆材)、さらには水分を弾く撥水系外用剤など、あらゆる手段を試しました。しかし、皮膚の状態は一向に改善せず、広範囲にわたる強い赤み(紅斑)や、皮膚が剥けてジュクジュクとした「びらん」が広がってしまいました。

2. IAD(失禁関連皮膚炎)とは何か?

この患者様のように、尿や便(あるいはその両方)が長時間皮膚に接触し続けることで生じる皮膚炎のことをIAD(Incontinence-Associated Dermatitis)と呼びます。

IADには、以下のような様々な病態が含まれます。

  • おむつ皮膚炎

  • アレルギー性接触皮膚炎

  • 物理化学的皮膚障害

  • 表在性真菌感染症(カビによる感染)

症状としては、単なる赤み(紅斑)だけでなく、皮膚がめくれる「びらん」、さらには深い傷となる「潰瘍」、そして強い痒みや痛みを伴うのが特徴です。

3. 単なる“かぶれ”ではないという認識

大切なのは、IADを単なる一時的な“かぶれ”と軽く見ないことです。これは、排泄物による化学的な刺激や細菌の影響、さらにはおむつ内の蒸れなど、多くの要因が複雑に絡み合って起こる「多因子性の炎症性皮膚障害」なのです。

特に、下痢を繰り返していたり、免疫力が低下していたりする状態では、皮膚のバリア機能が壊れやすく、一度悪化すると治療に非常に時間がかかります。

4. まとめ

「薬を塗っているのに治らない」「どんどん赤みが広がっている」という場合は、放置せずに早めにご相談ください。洗浄方法の見直しや、排泄ケアの工夫、そして病態に合わせた適切な外用剤の選択など、専門的な視点からのアプローチが必要です。

さくら在宅クリニックでは、患者様の皮膚トラブルに対しても、日々の生活環境を含めたトータルなサポートを行ってまいります。

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