在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療を科学する16~なぜ高齢者は「おむつかぶれ」になりやすい?IADのメカニズムと皮膚の特徴

 

介護の現場で多くの方が悩まれる「おむつ周りの赤みやただれ」。これは単なる肌荒れではなく、IAD(失禁関連皮膚炎)という皮膚障害です。

なぜ高齢になると皮膚トラブルが起きやすくなるのか? そのメカニズムと高齢者特有の皮膚の状態について解説します。

1. 高齢者の皮膚はなぜ「弱くて脆い」のか?

加齢とともに、私たちの皮膚は外からの刺激に非常に弱くなります。主な特徴は以下の通りです。

  • バリア機能の低下: 皮脂の欠乏や細胞間の脂質が減ることで、外からの刺激を通しやすくなります。

  • 皮膚の菲薄化(ひはくか): 皮膚が薄くなり、わずかな摩擦やズレでも傷つきやすくなります。

  • 免疫力の低下: 細菌やカビなどの感染症に対する抵抗力が落ちています。

  • 感覚の鈍化: 痛みや不快感に気づきにくく、発見が遅れることがあります。


2. IAD(失禁関連皮膚炎)発症のメカニズム

IADは、尿や便が皮膚に長時間接触することで起こりますが、その裏には複数の悪循環が潜んでいます。

① 皮膚の「ふやけ(浸軟)」

尿や便に含まれる水分によって、皮膚が白くふやけた状態になります。ふやけた皮膚はバリア機能が著しく低下し、少しの刺激で剥がれやすくなります。

アルカリ性への変化

本来、皮膚は弱酸性に保たれていますが、尿中のアンモニアや便中の酵素が皮膚に触れると、表面がアルカリ性に傾きます。これにより、細菌が繁殖しやすくなり、炎症が加速します。

③ 消化酵素によるダメージ

特に下痢便に含まれる「消化酵素」は、直接的に皮膚のタンパク質を破壊します。これが、強い赤みや「びらん(ただれ)」を引き起こす大きな要因です。


3. 多因子が絡み合うトラブル

IADは単なる「不潔」だけが原因ではありません。

  • 物理的刺激: おむつとの摩擦、清拭時のこすりすぎ。

  • 化学的刺激: 便・尿の成分。

  • 微生物: 湿った環境で増殖する真菌(カビ)など。

これらが高齢者の脆い皮膚に同時に襲いかかることで、重症化しやすくなります。


まとめ:予防のために大切なこと

高齢者の皮膚は「薄く、乾燥し、傷つきやすい」という前提に立ち、「汚れを優しく落とす(洗浄)」「皮膚を保護する(保湿・撥水)」「過度な摩擦を避ける」というスキンケアの基本が何よりの予防になります。

「赤みが引かない」「本人が痛がっている」といった場合は、早期に専門職へ相談しましょう。

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