在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅医療を科学する21~高齢者の「遅発性パラフレニー」とは?認知症との違いや治療法

「最近、一人暮らしの母が『近所の人が悪口を言っている』と怯えるようになった」「認知症かと思ったが、身の回りのことはしっかりできている……」

高齢の方にこのような症状が見られた場合、それは「遅発性パラフレニー(Late-Onset Paraphrenia)」かもしれません。今回は、聞き馴染みのない方も多いこの疾患について解説します。


遅発性パラフレニーとは?

遅発性パラフレニーは、60歳以降に発症する統合失調症によく似た疾患です。かつては高齢者特有の精神病として分類されていました。

主な特徴は以下の通りです。

  • 妄想と幻聴が中心: 「誰かに嫌がらせをされている(被害妄想)」「自分に関係のないことまで自分に関係があると思い込む(関係妄想)」といった症状や、周りに誰もいないのに声が聞こえる幻聴が主体となります。

  • 認知機能は保たれる: 認知症と異なり、記憶力や判断力、身の回りの自立度(ADL)は比較的保たれているのが特徴です。

  • 幻視は少ない: レビー小体型認知症などで見られる「虫が見える」といった幻視はあまり見られません。

どのような人に多い?

統計的には、孤立傾向にある高齢の女性に多く見られる傾向があります。耳が遠くなるなどの感覚器の衰えや、社会的な孤立が発症の背景に関係していると考えられています。


認知症(BPSD)との見分け方

「物忘れ」や「徘徊」といった認知症の症状と混同されやすいですが、適切な治療のためには識別が非常に重要です。


治療とサポート

治療は「お薬」と「環境づくり」の両輪で行います。

  1. 抗精神病薬(少量): 妄想や幻聴を和らげるために、ごく少量の抗精神病薬を使用します。高齢者の場合は副作用が出やすいため、慎重に調整を行います。

  2. 社会的支援・訪問医療: 孤立が原因の一つとなるため、介護保険サービスの利用や訪問医療を通じて、社会との接点を保つことが非常に有効です。

まとめ

「高齢者の被害妄想=認知症」とは限りません。正しく診断し、適切な医療とケアにつなげることで、ご本人もご家族も穏やかな生活を取り戻すことができます。気になる症状があれば、まずは専門医へご相談ください。

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