在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

在宅酸素療法を科学する15~デコンディショニングとは何か——6つの評価指標と運動療法前に知るべきこと

 

デコンディショニングとは何か——6つの評価指標と運動療法前に知るべきこと

慢性呼吸器疾患の患者さんは、呼吸困難のため運動を避けがちになり、全身の機能が低下する「デコンディショニング」に陥りやすい状態です。運動療法を安全に行うには、まず身体機能の評価が必要です。本記事では評価の種類と方法を詳しく整理します。

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1 デコンディショニングとは——負のらせんの仕組み

デコンディショニングとは、長期臥床や不動による全身の脱調整状態・体力の低下で、本来の機能が発揮できない状態を指します。不動・不活動が原因となり、全身の組織・器官にデコンディショニングが生じ、廃用症候群をきたすとされています。

呼吸困難による障害発生のらせん
肺機能障害呼吸困難
座ってばかりの生活
デコンディショニング(身体機能の失調・低下)
呼吸困難の増大さらなる廃用へ

呼吸器疾患の患者さんは労作による呼吸困難から運動が制限され、末梢骨格筋の萎縮や筋力低下、呼吸・循環機能の低下と運動耐容能の低下を引き起こします。そのため、運動療法を行う前に身体機能の評価が必須となります。

 

2 ① 筋力低下の評価

握力
全身の筋力を反映する客観的指標。他の筋力測定値と比較的良好な関係を示し、簡便で労力をほとんど必要としない。
・立位で左右各3回ずつ測定し、最大値を採用
・握力計の設定(幅)は「母指の基節根部と示指の先端までの距離の1/2」が適切とされており、再現性のある設定が重要
1RM(反復最大重量)
1回のみ反復できる最大負荷で、最大筋力に相当する。
①予測最大重量の50%でウォーミングアップ
②数分の休憩をはさみ最大5回試験
③トレーニング後の正確な筋力増加の測定にも利用
※安全性が十分確立されていないため、患者の状態を十分に観察して実施する
等尺性筋力測定器による測定
等尺性測定機器と固定用ベルトなどを用いて測定する。大腿四頭筋などがよく測定される。ベルトは測定肢内側のベッド脚などに連結した状態で行い、センサー部パッドを把持する。
 

3 ② 運動耐容能低下の評価

6分間歩行試験(6MWT)
6分間でできるだけ長く歩ける距離を測定。途中で立ち止まったり休んでもよい。「できるだけ速く歩く方法」と「至適歩行速度で計る方法」がある。HOT導入目的では連続測定可能なパルスオキシメータを使用したSpO₂評価も行う。
シャトルウォーキング試験(SWT)
10m間隔のコーンを往復する試験。CDからの発信音に合わせて歩行し、1分ごとに歩行速度を増加させる。歩行速度が維持できなくなったところで終了。漸増定量的な方法のため再現性が高いのが特徴。
 

4 ③ 身体活動量低下の評価

直接問診による聴き取り調査は信頼性に乏しいため、現在は歩数計や加速度計を用いた身体活動量(PAL)の評価が試みられています。

  万歩計 加速度計(単軸) 加速度計(多軸)
装着部位 腕・手首・踵
測定指標 1日歩数 1日歩数・運動強度 多項目
特長 小型・簡単・廉価 データ蓄積・日内変動の把握 運動強度と量の詳細把握
欠点 ゆっくりな歩行は過小評価 体幹運動が不正確 高価・振動に敏感・解析装置が必要
運動耐容能が向上したにもかかわらず身体活動量が向上しない場合、うつや不安が原因とされることが多い。そのときはHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)などによるうつ・不安の評価も併せて行う必要がある。
 

5 ④ ADL低下の評価

日常生活活動(ADL)の評価は、デコンディショニングによる身体機能制限の結果、どのような活動の制限が生活に及んでいるかを知るうえで重要です。一般的なBarthel Index(BI)やFIMは疾患特性を十分に把握できない部分があるため、呼吸器疾患専用の評価表が使われます。

NRADL(長崎大学呼吸器日常生活活動評価表)
食事・排泄・整容・入浴・更衣・移動・外出など10〜11項目について「動作速度」「呼吸困難感」「酸素流量」を各0〜3点(最高100点)で評価。入院版と外来版がある。連続歩行距離も評価項目に含む。
P-ADL(肺気腫患者用ADL評価表)
食事・排泄・入浴・洗髪・整容・更衣・歩行・階段・屋外歩行・会話の10項目について「酸素量」「頻度」「速度」「息切れ」「距離」「達成方法」を0〜4段階で評価する詳細な評価表。

※近年はPFSS(肺機能状態尺度)やPFSDQ(肺機能状態・呼吸困難質問票)も使用されている。

 

6 ⑤ QOL低下の評価

COPD患者は呼吸困難のため健康関連QOLが障害され、その評価は重症度やリハビリテーションの効果判定にも重要です。

CRQ
Chronic Respiratory Disease Questionnaire
慢性呼吸器疾患質問票
SGRQ
St. George's Respiratory Questionnaire
呼吸器専用QOL質問票
CAT
COPD Assessment Test
非常に簡便で最もよく使用されている
 

7 ⑥ フィジカルアセスメント

上記の各評価とともに、一般的なフィジカルアセスメントも実施することで患者の問題点をより明確にできます。

視診・触診・聴診・打診SpO₂測定スパイロメトリー胸部単純X線画像心電図評価呼吸困難感の評価

これらをデコンディショニングから引き起こされる症状と、各種評価とを組み合わせて評価することで、運動療法の方法・量・効果確認・リスク管理が適切に行えます。

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