在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

神経障害性疼痛疼痛を科学する3~神経障害性疼痛の疫学 ― どれくらいの人が苦しんでいるの?

神経障害性疼痛の疫学
― どれくらいの人が苦しんでいるの?

さくら在宅クリニック|逗子市 訪問診療・在宅医療

#神経障害性疼痛#帯状疱疹後神経痛#糖尿病性神経障害#在宅医療#慢性疼痛#緩和ケア#がん疼痛#術後痛#疫学#CRPS#訪問診療#疼痛管理#脊髄損傷#逗子市
神経障害性疼痛(Neuropathic Pain)は、慢性疼痛の代表的な病態です。在宅医療の現場でも多く出会うこの痛みが、実際にどれくらいの患者さんに生じているのか——疫学データをわかりやすく整理しました。

神経障害性疼痛とは?まず基本を確認

疫学(epidemiology)は「疾病などの健康事象の、人集団における分布と規定要因を研究する学問」です。神経障害性疼痛という概念が広く使われるようになったのは 1990年代以降のことで、比較的新しい概念のため、大規模な疫学調査はまだ十分に行われていません。

2〜40%
成人における慢性疼痛の罹患率(15編のレビューより)
約15%
慢性疼痛の概ねの罹患率(Verhaakら)
約3%
人口に占める神経障害性疼痛の推定割合(Gilronら)

疾患別の疫学データ

帯状疱疹後神経痛(PHN)

Dwarkinらの研究(50歳以上)で、抗ウイルス薬の有無による神経痛残存率を調査。

経過(月) 非投与群(%) 投与群(%)
1 68 50
2 50 25
3 35 15

 抗ウイルス薬の早期投与が痛みの長期残存リスクを大きく低下させます。

糖尿病性神経障害

4編の調査をまとめると、発生率は約 20〜24%。糖尿病患者の約5人に1人が神経痛を抱えています。

著者 症例数 発生率(%)
Bulpitt et al. 437 約24
Boulton et al. 382 約20
Zieglar et al. 1,171 約11.6〜32.1
Partanen et al. 86 約20
CRPS Type Ⅰ

年間10万人あたり 5.46人が発症、罹患率は10万人あたり 20.57人(Olmsted county 1989〜1999年)。

術後痛(慢性術後疼痛)

手術を受けた患者の 約20% に遷延性の慢性術後疼痛が発生(Macrae, 2001年)。乳房切除術後のphantom breast painは13〜36%、開胸術後では11〜67%に及びます。

がん疼痛における神経障害性疼痛

がん疼痛患者の 25〜33%(Davisらでは33.3%)に神経障害性疼痛が存在。在宅でのがん疼痛管理では鎮痛補助薬の活用が重要です。

外傷性脊髄損傷後
26%
20歳以下の患者
58%
20歳以上の患者

カロリンスカ病院調査(1995〜2000年、402例)。男女差なし。

その他の疾患
約5%— 痛みを伴う外傷性神経損傷
約8%— 脳卒中患者で中枢痛が発生
約28%— 多発性硬化症患者
約75%— 脊髄空洞症患者

 まとめ

神経障害性疼痛の定義が比較的新しく疾患も多彩なため、大規模疫学調査は困難ですが、人口の約3%が罹患しているとの推計があります。帯状疱疹後神経痛・糖尿病性神経障害・がん疼痛・術後痛など、在宅医療で日常的に出会う疾患にこそ高頻度で合併します。

慢性疼痛の適切な管理が在宅医療の質を大きく左右します。

慢性的な痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。