在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 61

ここから少し、がん緩和ケア副作用と合併症のマネジメントについて述べていきます。 まず化学療法には、殺細胞薬、ホルモン療法、分子標的薬、免疫療法が存在します。 これら4種類の化学療法において急性期に起こる副作用と遅発性に起こる副作用に分けること…

在宅患者さんにおける痛みの治療(内服が難しくなってきたら)

患者さんの活気がなくなり、経口も難しくなってきた場合痛みをとる治療の一つとして麻薬の貼り薬があります。フェントステープはフェンタニル(麻薬)の貼付薬であり、在宅医療の現場では非常に重宝します。特に癌患者さんで、内服できなくなったが痛みが出…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 60

大腸がんの合併症は、がんの進行・再発による症状によるものです。 食欲不振、体重減少、疼痛、倦怠感、PS低下と進んでいきます。 転移・他部位の症状としては 消化管:消化管閉塞 がん性腹膜炎:イレウス、腹水 肝臓:肝障害、皮膚伸展痛、黄疸 骨:骨痛 脳:神…

人の見た目は大事

人は見た目が〇〇割という、本が以前売れていたように記憶しています。調べれば、すぐ分かるのですが敢えて調べません。見た目で騙されないように、常々思っていたりもするので。そして見た目が老けていると実際の寿命も短いようです。これは、経験則からも…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 59

大腸がんの化学療法における治療の副作用は 殺細胞薬による骨髄抑制とそれに伴う発熱性好中球減少症・感染症に注意が必要です。 オキサリプラチン:末梢神経障害、アレルギー反応、嘔気・嘔吐、骨髄抑制 イリノテカン:下痢、嘔気・嘔吐、倦怠感、骨髄抑制(UGT…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 58

大腸がんのステージ別治療として 0期は粘膜内にとどまるものであり、内視鏡切除にて5年生存率は95%です。 Ⅰ期は腸管壁の固有筋膜層までの浸潤、リンパ節転移なしで外科的切除により5年生存率は90%です。 Ⅱ期漿膜への露出または周囲への浸潤してリンパ節転移…

在宅医療における薬の飲みすぎに関する問題

薬の飲みすぎをポリファーマシーと呼びます。カタカナの方が何か学術的な印象もあるので、ポリファーマシーとします。私自身、勤務医時代におけるポリファーマシーの原因は、処方する側7割、処方される側3割と考えてました。 「先生、歩くと少しフラフラす…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 57

今回から、大腸がんについて詳述していきます。 がん死亡数は男女合同で第2位(男性3位 女性1位)であり、がん罹患数は男女合同で1位の疾患です。 大腸がんの予後は化学療法の進歩にて劇的に改善してます。 過去15年の治療薬の進歩で予後が改善しました。 生存…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 56

胃切除後の合併症として重要なものを挙げると ①ダンピング症候群は早期と後期に分けて考える必要があります ◆早期は食物が小腸へ突然入ることにより生じます 症状としては、動悸、冷や汗、ふらつき等が挙げられます ◆後期は高血糖による症状で、次に反応性の…

慢性閉塞性肺疾患 (COPD)患者さんの意識障害

慢性閉塞性肺疾患 (以下COPD)の患者さんが意識障害を生じている場合は、かなり緊急度の高い病態です。ただし、こうした患者さんは恒常的に血中二酸化炭素(CO2)の濃度高く酸素投与に注意が必要とされています。その理由は正常の人は血中CO2濃度の上昇によって…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 55

胃がんの化学療法における治療の副作用は 殺細胞薬による骨髄抑制とそれに伴う発熱性好中球減少症・感染症に注意が必要です。 S-1:嘔気、倦怠感、下痢、骨髄抑制、肝障害 オキサリプラチン:末梢神経障害、アレルギー反応、嘔気・嘔吐、骨髄抑制 シスプラチン…

高齢者の誤嚥性肺炎の診断スコア

在宅医療における高齢者において肺炎は非常に起こりやすい感染症の一つです。人は無意識に嚥下をしてますが、これは何も食事をしているときばかりでなく、寝ている時も唾液などを無意識に嚥下しています。嚥下をするという機能も脳からの命令で行われている…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 54

胃がんのステージ別治療として 1期は胃壁の固有筋膜層浸潤まで及びリンパ節転移2個までです。 この場合外科的切除ないし内視鏡切除で治癒率は90%と非常に高くなります。 3期は周囲への浸潤及び多数のリンパ節転移ありであり、外科的切除+補助化学療法とな…

多愁訴に半夏厚朴湯が著効した症例

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)はいわゆる「ヒステリー球」という、喉に何かが詰まったような違和感に効くとされている漢方薬です。 当院の患者さんで、半夏厚朴湯がよく効いた患者さんがいたので報告します。 症例:90代女性 診察の度に、「喉が詰まる」…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 53

胃がんの治療総論を述べます 切除が治療の原則ですが、切除不能例に関して 化学療法感受性のがんであり半数以上の患者に著効しますが、2nd ライン以降は効果が下がるのが特徴です 臨床試験での生存期間中央値は約13カ月です 乳がん同様、HER2陽性胃癌にはト…

ヒルドイドは乾燥剤として作用する

ヒルドイド(ヒルドイドソフト軟膏やヒルドイドソフトクリーム)が皮膚に対し乾燥剤として作用していることがよく分かる症例を提示したいと思います。 90代男性。両足関節前面に非常に強い乾燥があり、痒みもあった患者さんです。皮脂欠乏性湿疹の診断で、ヒ…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 52

今回から胃がんについて述べていきます まず一般論として ・罹患率が大腸がんに次いで2位 ・内視鏡治療や胃切除術が治療の基本 ・個別化治療の開発が期待される ・ヘリコバクターピロリ感染が原因の多くを占める ・症状がある患者は進行がんが多い 切除不可…

痛みのない傷の処置を目指して

当クリニックでは、褥創や傷を洗浄する際には水道水で良いと考えてますが、より痛みが生じないように、生理食塩水で洗うことを推奨しています。 生理食塩水は血漿浸透圧と同等な浸透圧を持ち、組織に対する刺激が少ないためです。 病院でよく行われているの…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 51

がんは落ち着いていて経過観察されている場合において、在宅医療医注意すべきことは何でしょうか? まず、治療後がんが根治されているかどうか確認が必要です。 具体的には、治療の晩期毒性としての リンパ浮腫、放射線性肺臓炎、末梢神経障害、不妊症、血管…

リウマチ性多発筋痛症の診断と治療

高齢者を中心に診療していると、高齢者に多い疾患であるPMR(リウマチ性多発筋痛症)によく遭遇します。 第95回日本整形外科学会学術総会において、「リウマチ性多発筋痛症の診断と治療 杉原 毅彦先生 聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科」と…

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 50

乳がんの治療の副作用に関してホルモン療法においては タモキシフェン SERMs(selective estrogen receptor modulator):抗エストゲン薬 エストロゲンに競合拮抗するので、更年期症状、血栓症、子宮体がんリスクがあります。 アロマターゼ阻害薬(AI剤)、LHRHア…