在宅診療医 内田賢一 奮闘記

三浦半島の根本である逗子・葉山及び横須賀、神奈川で在宅診療行っています。長らく血管障害を中心として脳外科医として働いてきましたが、自分のキャリア後半戦は自分の大好きな湘南の地の人々が本当に自宅で安心して医療受け過ごせるお手伝いをできたらと考えております。自身の医療への思いや分かりにくい医学の話を分かりやすく科学的根拠に基づき解説して参ります。

高齢者救急の難しさ: 非典型症状への対応 #高齢者 #救急

高齢者救急が難しいのは、高齢者は症状が非典型的であったり、認知症があるとうまく症状を訴えられないなどの点にあります。

例えば、高齢者の肺炎では約1/3で咳や発熱がなかったりします。咳や熱がないからと言って、肺炎は否定できないのです。

今回は、高齢者を介護する際に、どういった点に注意してみていけばよいのかについてあげてみます。

なんとなくいつもと違う。様子がおかしい。

これは軽度の意識障害の可能性があります。高齢者の感染症では、初期に、このような軽度の意識障害が現れることがあります。

急にぼけた。

通常、認知機能は徐々に低下します。しかし、急にぼけたとなると、これは、せん妄の可能性があります。せん妄は通常、急に環境が変わったりした場合や夜間に起こることが多いです。環境の変化もなく、日中に起きたりした場合は、内科疾患(感染症、心血管疾患、低血糖など)が隠れているかもしれません。

急に立てなくなった。歩けなくなった。

老化はゆっくりと進行するので、徐々に歩けなくなるのが普通です。急に歩けなくなる場合は、感染症、心血管疾患などが背景にある可能性があります。

・しきりにあくびをしている。

あくびは脳に酸素が足りていないというサインです。循環がうまくいかなくなってきているのかもしれません。

不安を訴える。多弁になる。

これも脳血流低下のサインかもしれません。

このようなサインにうまく気づくことができれば、悪くならないうちに早めに対応できます。しかし、こういったサインに気づかずに様子をみていると、急変する場合もあります。

こういったサインを見た場合は、まずはバイタルサインをチェックするのが基本です。その中でも、最も重要なのは呼吸数です。呼吸数が20回/分以下ならひとまず安心してよいでしょう。

 

You Tubeにて在宅診療の知識を学んでみませんか?☟より

https://www.youtube.com/channel/UCMkHB9UwsqYXdxEAij9yD4Q

#高齢者感染症の警告サイン#軽度の意識障害
在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら在宅クリニックは逗子、葉山、横須賀、鎌倉の皆さんの健康と安心に寄与して参ります

 

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 90

腎がんの治療に関して詳述します

限局がんに関しては

  • 外科的切除
  • 術後補助療法の有効性は証明されていない

転移がんに関しては

  • 転移がんでも原発巣切除で予後が改善する症例もある
    インターフェロン、VEGF阻害薬の化学療法が有効
  • 緩徐進行性では転移巣切除で長期予後の場合もある
    (とくに再発まで1年以上の緩徐進行性)

化学療法

重症度判断基準:体温とバイタルサイン

施設スタッフに、「患者さんが何℃以上であれば連絡したほうがよいですか?」と聞かれることがよくあります。

一応、「38℃以上になれば連絡してください」などど答えていますが、実際は、医師は熱だけで重症度を判断しているわけではありません。他のバイタルサインと合わせて、重症度を判断しています。

38℃以上の熱がでている方がいた場合、脈拍や呼吸数に注目してください!

脈拍が90回/分以上だったり、呼吸数が20回/分以上の場合は、重症の可能性があります。

この根拠はSIRS(全身性炎症症候群)の診断基準です。

SIRS
①体温>38℃または<36℃
②心拍数>90/分
③呼吸数>20/分またはPaCO2<32 torr
④白血球数>1,2000,<4000/mm3または未熟顆粒球>10%
の2項目以上をみたす病態と定義される。

SIRSは敗血症の診断に古典的に用いられていた指標(現在はqSOFAを使う)ですが、熱が出ている際の重症判断のスクリーニングに使うのが良いです。

冒頭の質問には、「体温が38℃以上でなおかつ、脈拍が90回以上、あるいは呼吸数が20回以上であれば連絡してください」と本来は答えたいのです。

 

呼吸数#呼吸様式#動脈血酸素飽和度(SpO2)#チアノーゼ所見#血圧#脈拍#不整脈の有無#意識レベル#尿量#体温

在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら在宅クリニックは逗子、葉山、横須賀、鎌倉の皆さんの健康と安心に寄与して参ります

 

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 89

今回から泌尿器がんについて詳述していきます

主な泌尿器がんは下記になります

・腎がん

・尿路上皮がん(膀胱、尿管、腎盂、腎杯)

前立腺がん

・精巣がん

次に腎がんの診断についてですが特徴は

①無症状で他疾患の精査中に偶然発見される

②増大して疼痛や血尿で発見される

③貧血、多血症、発熱、高カルシウム血症などparaneoplastic syndromeで発見される

などが挙げられます。

進行のスピードには個人差があります*切除後再発も数カ月~数年後とさまざまです

さまざまな組織型があり、薬剤反応性と予後が異なります

*淡明細胞がん(clear cell carcinoma)がもっとも良好

進行がんにおけるリスク分類には

MSKCC(スローンケタリング記念がんセンター)リスク分類が存在し

①PS②LDH③高Ca④貧血⑤診断~治療開始が1年未満

上記5項目で分類されます

#逗子、葉山、横須賀市鎌倉市横浜市の在宅医療

爪を通さずに測定!パルスオキシメーターの新しい使い方#医療

パルスオキシメーターは皮膚を通して、動脈血酸素飽和度(SpO₂)と脈拍数を測定する機械です。

下の写真のように指に挟んで使用します。

注意点として、指先が冷えていて血流が悪い場合、爪にマニキュアが塗られている場合などは、正確に測れないことがあります。

新型コロナウイルスPCR検査を受けたいために、SpO₂を低く表示させようとして故意にマニキュアを塗る方がいるという話もあります。

医療従事者は、パルスオキシメーターは爪を通して測るという先入観を持ちがちですが、実際には横向きにつけても測定できます。

これで、マニキュアの影響をなくすことができます。

爪白癬の方、指の拘縮が強い方などにも応用が可能です。

一度、試してみてください。

パルスオキシメーター#動脈血酸素飽和度#SpO₂
在宅医療 | さくら在宅クリニック | 逗子市 (shounan-zaitaku.com)さくら在宅クリニックは逗子、葉山、横須賀、鎌倉の皆さんの健康と安心に寄与して参ります

褥創治療:体圧管理と湿潤療法の重要性

褥創にガーゼを当てるということはよく行われていますが、あまりよくない処置です

褥創治療においては、褥創はなぜできるのか?傷が治るとはどういうことなのか?を考えなければなりません。

①褥創はなぜできるのか?
廃用が進んだりで寝たきり状態になり寝返りができなくなると、体の一部分(特に骨の出っ張った部分)に圧力(体圧)がかかり、皮膚に血液が流れなくなり、皮膚が壊死することでできます。

つまり、褥創の治療または予防には、この体圧を下げなければなりません。褥創にガーゼを当て、ガーゼを下にして座ったり寝たりして体重がかかると、ガーゼには厚みがあるため、褥創部の体圧が上がってしまい、褥創はいつまでたっても治りません。原因(体圧)の除去ができていないからです。

②傷が治るとはどういうことなのか?
傷は湿潤環境下で修復が進むことが明らかになっていますが、ガーゼは傷を乾燥させてしまいます。

褥創にガーゼを当てるというのは、褥創を見えなくしているだけ(臭いものに蓋をしているだけ)で、治療の効果はありません。効果がないどころか、褥創を乾燥させ、また体圧を上げている、つまり褥創を悪化させているとさえ言えるのです。

これを解決するのが、体圧管理や湿潤開放療法です。ガーゼは百害あって一利なしと言えるでしょう。

逗子、葉山、横須賀、鎌倉を撮影される山内様の写真です

 

がん緩和ケア+在宅医療医に必要ながん治療に関する知識を科学する 88

ここで婦人科系がんで使用されるカルボプラチン+パクリタキセルについて詳述させて頂きます。
・子宮体がん・頸がん、卵巣がんで標準的に使用され、特に卵巣がんでは長期間使用します
・カルボプラチンの長期使用でアナフィラキシーショックを生じることあり、投与中に生じることもあります
・パクリタキセルによる末梢神経障害は、重度になると回復に長期間かかります